Research Abstract |
平成23年度は,非定常空気力とカルマン渦の関係に焦点を当て,数値シミュレーションによる非定常空気力の発生機構とカルマン渦との関連について研究を実施したほか,竜巻移動時の風速時刻歴について新たに検討を加えた.さらに,5本円柱の非定常空気力について昨年度に引き続き検討を加えた. 1.風速急変時に2次元矩形柱に作用する非定常空気力の数値シミュレーション(等価Kuessner問題) 2.竜巻移動時の風速時刻歴のシミュレーション 3.風速急変時に5本円柱に作用する非定常空気力の計測 1.は風速急増時の2次元矩形柱周囲の流れの時間変化を数値シミュレーション(3次元LES)により再現し,矩形柱に作用する非定常空気力を求めた.その際,風速一定のときのカルマン渦放出周期を基準に風速立ち上がり時間を種々変化させ,風速の立ち上がり開始から揚力のピークが発生するまでの時間t_Lと風速が定常値に達するまでに要する時間t_Uとの関係を明らかにした.その結果,揚力ピーク,抗力ピーク発生時の流れのパターンはt_Uに依存せず常に同一のパターンであること,およびt_Lとt_Uはほぼ線形関係にあること,揚力ピーク発生時の風速U(t_L)で無次元化した場合,t_Lとカルマン渦放出周期の関係が見られる結果が得られた.数値シミュレーションと風洞実験結果との整合性を空気力,表面圧力からも確認するとともに,他の断面比(断面幅/断面高さ)で同様の検討を加えることにより,非定常空気力発生機構の解明にさらに迫ることが可能と考えられる. 2.では竜巻を単一のランキン渦と仮定し,場の風により移動する竜巻周囲の各位置で観測される風速の時刻歴を数値的に明らかにした.さらに,鉄道車両の断面を4mx4mの正方形とし,前述の風速時刻歴より,各地点に車両があるときに想定される最大揚力を求めた.この方法は,風速急変時の鉄道車両の安全性評価に必要な情報を与えるものであり,本研究で仮定した値のみならず,より広範なケーススタディを今後実施する必要性が見出された. 3.では,22年度に5本円柱を対象に測定を行ったっところ,風速一定のもとでは発生しない突風作用時固有の空気力(負の抗力)が発生するケースの存在が見出されたため,圧力と空気力の対比や各円柱の非定常空気力の同時計測を実施した.その結果,模型サイズ等,測定精度に本質的な問題があることが明らかとなった.十分な精度を有する実験を行うためには大型の実験装置が必要となるため,今後既存の風洞の改良を試みる予定である.
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