2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21360387
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
笠井 均 Tohoku University, 多元物質科学研究所, 准教授 (30312680)
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Keywords | ナノ結晶 / 結晶生成過程 / ストップトフロー / ペリレン / 古典核形成理論 / ナノ結晶化速度 / 結晶サイズ / 再沈法 |
Research Abstract |
本年度では、ナノ結晶生成過程を速度論的に解析するために、再沈法における初期挙動の2次元画像解析を行う装置を本申請の研究費を利用して、自作することを試みた。その結果、ある程度は完成したが、未だに良好な結果を出せる段階まで到達できなかった。 そこで、再沈法における初期挙動を同様に観測可能なストップトフロー分光装置を用いて、ペリレンを対象化合物として取り上げて、再沈法におけるナノ結晶化に要する時間を計測するとともに、制御することを行った。再沈法における実験条件の内、対象化合物の溶液の濃度、または溶液と貧溶媒の量比という実験因子を変えると、再沈処理直後のペリレン溶液の吸光度における減衰速度の時定数は、8.9S^<-1>から210S^<-1>までの範囲で変化することが観測され、ナノ結晶化に要する時間を制御可能であることを明らかにした。これは、対象化合物の過飽和度依存性に関与する結果ともいえるものであり、再沈処理直後の系内の過飽和度が増大すればするほど、ナノ結晶化の速度が向上することが分かった。その後の解析により、本実験結果におけるナノ結晶の生成メカニズムが、古典核形成理論で説明し得ることが判明した。再沈法におけるナノ結晶生成が、古典核形成理論で説明されたことはこれまでになく、本考察は非常に意義深いものであるといえる。 また、ペリレン溶液の吸光度における減衰速度の時定数と生成したナノ結晶のサイズとの関係もまとめられた。その結果、減衰速度の時定数が増大すると、ナノ結晶形成速度がより速くなり、生成するナノ結晶のサイズが微小化する傾向が示された。この傾向は、これまでの経験的に得られた知見と同じものであるが、現在では古典核形成理論に基づく知見であるという認識を持つことができ、従来の経験則のみによる考察からの脱却が図れることになった。
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Research Products
(7 results)