2011 Fiscal Year Annual Research Report
大気圏突入飛行体の熱気体力学を応用した氷天体の極超音速アストロバイオロジー研究
Project/Area Number |
21360413
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 宏二郎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (10226508)
|
Keywords | 極超音速 / 大気圏突入 / 氷天体 / アブレーション / 熱化学非平衡流 / 数値流体力学 / 風洞実験 / アストロバイオロジー |
Research Abstract |
原始地球において頻発した地球外天体の大気圏突入は、大気成分や地上物質の形成、さらに生命の誕生に大きな影響を及ぼしたと考えられる。この観点から、大気圏に突入する氷天体まわりの極超音速高温流れについて風洞実験および数値解析を行った。研究のポイントは、アブレーションによる空気力変化、スポレーション観測、プラズマ放電による気流中での化学反応模擬、数値流体力学によるHCN生成の検討、である。 実験は、東京大学柏キャンパスの極超音速風洞(マッハ数7、最高よどみ点温度1000K)を用いて行った。空力加熱により淀み点領域で氷表面は後退する一方、肩近傍の気流膨張領域では温度が急減し霜柱状の再凝結氷が積み重なって帽子のつば状の構造を造っていく。高速ビデオでの観察により、この霜柱状氷の先端付近が壊れて微小な固体氷が下流に向けて放出されるスポレーション現象が見られた。さらに、氷柱自体が崩壊し、大量の水蒸気を発生することが氷塊の大規模崩壊の前駆となることがわかった。供試体に電極を入れ、プラズマ放電を起こして、気流中で化学反応流を模擬することに成功した。ナローバンドパスフィルターを介した画像からCNの発生が確認され、生命前駆物質として重要なHCNの生成実証に向けて、風洞実験の有用性を示すことができた。 昨年度に開発したC,H,0,N28種熱化学非平衡反応ナヴィエ・ストークス数値計算コードを用い、アブレーションを起こしながら原始地球大気中を極超音速飛行する氷天体まわりの流れを解析した。前方にできる強い衝撃波背後でCNが生成され、アブレーション由来の水素と反応することで、淀み点領域の氷表面近傍でHCNが生成されることがわかった。このHCNは、ほぼ化学反応凍結状態となって後流に排出されており、大気圏に突入する氷天体まわりの高温流れがHCNの高効率生成装置の役割をしている可能性が示された。
|