Research Abstract |
海中周囲雑音を音源として積極的に利用して海中物体を映像化する手法を周囲雑音イメージングと呼ぶ.本研究の目的は,周囲雑音イメージングを実現するため,中心周波数120kHz,方位解像度1度の音響レンズを設計し,沿岸域生物雑音を用いた物体映像化について検討することである.本年度は主要素となる音響レンズを設計・製作し,さらに実験予定海域において雑音源の特性調査を行った. まず,本レンズを製作するに当たり材料となる重合接着アクリル材の音速測定を行い,水中音速との比より屈折率を求めた.実験予定期間(11月)の水温20℃における屈折率0.54を用い,開口径1.0m,像点距離1.2mとして,アプラナートレンズの設計理論(物点距離を無限遠,レンズA)および光学設計ソフトZEMAX(物点距離を50m,レンズB)を用いてレンズ表面形状を計算した.次に,音源距離を10~50mで変化させ,120kHzの球面波を両レンズに入射させる集束音場解析を行い,入射角度-7~+7度範囲で1度毎に変化させ,像点および-3dB領域を計算した.各-3dB領域が重複していないことから,両レンズは所望の方位解像度を有していた.ただし,像点音圧はレンズBが大きく,そして斜め入射時のサイドローブレベルがレンズBの方が小さいことから,レンズBを採用し,最終的に1.0m×1.0m×0.3mのアクリル板を切削加工してレンズを製作した.これより,物体映像化に必要な実時間ビームフォーミングを行う音響レンズが実現されたことになる.本レンズは次年度の映像化実験で利用する予定である. 加えて,実験予定海域(内浦湾)の海中周囲雑音を観測した結果,主要雑音源とされる沿岸域生物雑音の分布は計測バージ底面,計測バージ直下の海底,周辺の養殖用生け簀直下の海底に集中していた.この結果は,次年度の映像化実験におけるイメージング装置とターゲットの配置の決定に利用される重要な情報である.
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