Research Abstract |
海中周囲雑音を音源として積極的に利用することにより海中物体を映像化する手法を周囲雑音イメージングと呼ぶ.本研究では,周囲雑音イメージングを実現するため,中心周波数120kHz,方位解像度1度の音響レンズを設計し,沿岸域生物雑音を用いた物体映像化について検討した.一昨年度(平成21年度)は,開口径1.0mで焦点距離1.2mの音響レンズを設計・製作し,昨年度(平成22年度)はそれを用いたプロトタイプシステムを構築して,内浦湾の計測バージにて実海域試験を行った.本年度(平成23年度)はその実験データの解析を行った.まず,ビームパターンの計測データより,本レンズは120kHzにて所望の方位解像度であるビーム幅1度を有しており,また80kHzではビーム幅は120kHzに比べて約1.5倍に広がり,低周波にて方位解像度が低下することを確認した.次に,各ハイドロフォン受波信号のパワースペクトルを計算して,方位(横軸)-周波数(縦軸)-受波強度(疑似カラー)となる映像化処理を行った.方位0度と-6度に配置した120kHzのピンガ音を映像化すると,受波強度は設定通りの方位と周波数でピークを形成し,本システムによる映像化は正確であることを確認した.さらに,方位0度・距離30mに幅3m・高さ1mおよび方位-6度・距離15mに幅1m・高さ1.6mのアルミ板で構成された2つのターゲットを配置し,海中周囲雑音のみで探知を行ったデータを解析した.受波信号はターゲット散乱波と直接受波した雑音に分類され,ターゲット散乱波のみを抽出したところ,ターゲット方位の受信強度が他方位に比べて増加しており,ターゲットの映像化に成功した.また,同時に同海域の海中周囲雑音を観測したデータより,主な雑音源はテッポウエビによるものであり,バージ底面および海底に雑音源が分布していることがわかった.これらの成果は沿岸域生物雑音によって物体映像化が可能であり,音響レンズがそれを実現する有望な要素技術であることを実証するものである。
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