Research Abstract |
(1)東洋町・ヴェレンベルグの事例分析に基づき,放射性廃棄物処分施設受け入れに関わる住民の態度形成分析枠組みを構築・検証するため,既存事例(フランス=ビュール地下研究所立地,韓国=慶州市LILW処分施設立地・扶安郡同施設立地失敗・群山市同施設立地せず)を分析した.その結果,分析枠組みを改良・検証することができた. (2)同分析枠組みにより,住民の態度形成過程は(a)感情的判断と理性的判断の2ステップで構成され,(b)それぞれの判断ステップは「信頼」,「恐怖」,「リスク認知」などといった影響要因により左右されることがわかった.また,(c)それら影響要因は,さらに背後にある環境要因(政治的リーダーシップ,アジェンダ,政治体制など)によって左右されることも明らかにした. (3)以上の検証に基づいて(一定程度)確立された分析枠組みを用い,東洋町とヴェレンベルグの事例について再度分析を試みた.その結果,(a)東洋町では町外反対派によるレトリカルな反対主張により形成されたアジェンダが住民の恐怖・怒りを増幅し,元々実施主体NUMOや国家政府に対する信頼が欠如していたこと,日常的に感じていた不公平感もあり,「感情的判断」で強硬な反対姿勢を形成するに至ったと分析できた.(b)ヴェレンベルグでは元来科学への信頼は比較的高く東洋町ほどの恐怖はなかったが,住民が元々抱いていた原子力に対する態度や,選定プロセスで実施主体NAGRAへの信頼を失ったこと,逆に反対派団体への信頼を高めたこと,最終的に州民投票という方法により意思決定が行われる制度になっていたこと,などにより「感情的判断」で反対姿勢を形成したと分析できた.以上のように,本研究で構築している分析枠組みは,選定プロセスを検討する上で何がポイントになり得るかを明確に示しうるといえる.今後はさらにケース分析を重ね,妥当性を高めることが必要となる.
|