2009 Fiscal Year Annual Research Report
シダ植物の無配生殖種における遺伝的多様性の獲得機構
Project/Area Number |
21370037
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
村上 哲明 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 教授 (60192770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 蘇娟 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (10362914)
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Keywords | シダ植物 / 無配生殖 / 有性生殖 / 交雑 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
本研究の目的の一つは、シダ植物の無配生殖種が大きな遺伝的多様性を獲得・維持しているのは、どのような機構によるのかを、互いに近縁な無配生殖種と有性生殖種が混成している野生集団、あるいは無配生殖種のみが生育しているにもかかわらず高い遺伝的多様性のみられる野生集団の詳細な細胞学的・遺伝的な比較解析によって明らかにすることである。 今年度は,ベニシダ類(Dryopteris erythroso5ora complex,オシダ科)の無配生殖型と有性生殖型(ハチジョウベニシダと呼ばれている)の個体が多数混生している東京都の伊豆大島において,詳細な野外調査を行った。さらに,現地での野外調査の際に採集した植物材料を用いて、アロザイム多型解析と本補助金で新規に購入したプロイディ・アナライザーを用いた倍数性解析もおこなった。 その結果,調査した33集団のうち8集団については,採集した約25個体のうち3個体以上の有性生殖型個体を含む有性・無配両生殖型の混生集団であった.一方で,22集団については,無配生殖型のみからなる集団であった.混生集団の無配生殖型個体と無配生殖型のみからなる集団の無配生殖型の遺伝的多様度とクローン多様度を比較してみると,混生集団のものの方が有意にその多様度が高いという結果が得られた.このことは,野外の混生集団においても,交雑を通じて無配生殖型が有性生殖型の遺伝的多様性を取り込んでいることが示唆されて非常に興味深い.また,両生殖型が混生する集団において,胞子をつけているすべての成熟個体について遺伝子型と倍数性を調べた結果では,多様な遺伝子型の2倍体有性生殖型個体,3倍体無配生殖型個体が大部分であったが,少数ながら両生殖型間のF1雑種と考えられる4倍体の個体が見いだされた.このような4倍体雑種を介して有性生殖型の遺伝的多様性が無配生殖型に移入している可能性が考えられる.
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Research Products
(8 results)