2011 Fiscal Year Annual Research Report
シダ植物の無配生殖種における遺伝的多様性の獲得機構
Project/Area Number |
21370037
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
村上 哲明 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 教授 (60192770)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 蘇娟 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (10362914)
|
Keywords | シダ植物 / 無配生殖 / 有性生殖 / 交雑 / 遺伝的分離 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、基本的に親と遺伝的に同一の子孫のみを生産すると考えられるシダ植物の無配生殖種が大きな遺伝的多様性を獲得.維持しているのは、どのような機構によるのかを、ベニシダ類などを材料にして明らかにすることである。今年度は、ベニシダ類について近縁な無配生殖種と有性生殖種を人工的に交配させて、どのくらいの頻度で雑種を形成するか、さらに生じた4倍体の雑種でどのようなことが起こるかを調べた。2倍体有性生殖型のハチジョウベニシダと3倍体無配生殖型のベニシダを人工的に掛け合わせたところ、その間の4倍体雑種は596回の交配のうち23回、3.9%で形成された。一方、対照実験として、有性生殖型のハチジョウベニシダ同士を同じ回数交配させた結果、596回のうち108回、18.1%で次世代の胞子体が形成された。これにより、有性生殖型同士が交雑する場合を100%としたとき、無配生殖型は、その21.5%と高いレベルで交雑する能力を保持していることが明らかになった。さらに、ハチジョウベニシダとベニシダの間の4倍体雑種と考えられる個体から胞子を採取して、生じた子孫配偶体の倍数性を調べた。その結果、4倍体のみならず、2倍体、3倍体の子孫も生じていることが分かった。これらを総合すると、ベニシダ類で3倍体無配生殖型に大きな遺伝的変異が見られるのは、これらがかなり高い頻度で近縁な2倍体有性生殖種と交雑して、その遺伝的変異を取り込み、さらに生じた4倍体雑種がすぐに不等分離をして3倍体無配生殖型の子孫を生じるからであることが強く示唆される結果が得られた。一方、無配生殖型のみが知られているヤブソテツ類については、昨年度までに得られていた遺伝的分類を高頻度で起こすというデータ等を2本の論文にして発表した。
|
Research Products
(6 results)