2011 Fiscal Year Annual Research Report
バチルス属細菌がもつ新奇なべん毛モーター固定子複合体の機能と構造の解明
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21370074
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
伊藤 政博 東洋大学, 生命科学部, 教授 (80297738)
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Keywords | べん毛モーター / 好アルカリ性細菌 / イオンチャネル / ハイブリットモーター / 枯草菌 / プロトン駆動力 / ナトリウム駆動力 / 固定子 |
Research Abstract |
これまで好アルカリ性細菌から新規なNa^+駆動型のべん毛モーター固定子MotPSを発見し、枯草菌の2つの固定子MotABとMotPSの各サブユニットの機能的な役割を解明した。更に、pH7から11付近まで生育が可能な好アルカリ性細菌Bacillus clausiiのべん毛モーターが、これまでに例のない環境pH応答型のべん毛モーターであることを明らかにした。これらの成果を踏まえ、今回の申請では(1)枯草菌が持つべん毛モーターについてモーターのトルク特性を解析すること、(2)枯草菌のべん毛固定子MotAB、MotPSと相互作用する側の回転子複合体の構成タンパク質であるFliGに着目し、モーターの回転に重要なアミノ酸残基を特定すること、(3)枯草菌が持つNa^+駆動型固定子MotPSについて、大量精製系を確立してX線結晶構造解析を行い、モーターの回転機構を原子レベルで解明することを目的とした。 2011年度は、(1)では、培地、測定用バッファーのどちらを使用した場合も枯草菌のべん毛モーターが2種類の固定子を含むハイブリッドモーターであることを示すデータを得た。これに加えて固定子と蛍光タンパク質を融合した固定子を枯草菌内で発現し、固定子の局在においても2種類の固定子MotABとMotPSが共局在している結果を得た。現在、これらの成果は、投稿準備中である。(2)では、枯草菌でこれまで明らかにされていないべん毛モーターの回転子と固定子の回転相互作用に関与するアミノ酸残基の同定を部位特異的変異導入法により作成した変異株を用いて試みた。野生型の固定子をもつ株に部位特異的変異導入をした固定子を共発現させるドミナントネガティブ実験を行い、固定子の発現と変異箇所の影響から構造面と機能面に重要なアミノ酸残基の同定を行うことができた。現在、この成果は投稿準備中である。また、回転子側のタンパク質FliGに関しても、現在、機能面で重要なアミノ酸残基の同定を行っている。(3)では、枯草菌のMotPSについて大量精製系の確立と結晶化への試みを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要に記した(1)と(2)に関しては、成果をまとめる段階に入っており、おおむね順調と考えているが、膜タンパク質である固定子複合体の結晶化には、時間を要している。X線結晶構造解析を行うには、3次元的に均一な試料が大量に必要であり、平成24年度は、精製度を上げると共に、試料の凝集状態や分散状態を確認しながら、条件の精度を詰めて構造解析が可能な結晶の取得を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究実績の概要に記した(1)と(2)に関しては、本年度中に実験成果をまとめたいと考えている。 (2)に関しては、特に多重変異株の構築とその解析に力を入れる予定である。(3)に関しては、枯草菌のNa^+駆動型べん毛モーター固定子MotPSのX線結晶構造解析を行ために、少しずつではあるが結晶化の最適化を進めている。そして、少しでも早く構造解析まで進めるように努力する。
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