2011 Fiscal Year Annual Research Report
バレイショの根貫通力と根吸水力の遺伝変異の解明に関する国際共同研究
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21380011
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩間 和人 北海道大学, 大学院・農学研究院, 教授 (70144219)
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Keywords | ジャガイモ / 根 / 乾燥抵抗性 / 遺伝変異 / 品種改良 / 吸水能力 / 食料生産 / 地球温暖化 |
Research Abstract |
本研究では、バレイショ乾燥抵抗性に関係する土壌堅盤層に対する根貫通能力(根貫通力)と乾燥土壌条件下での個々の根の水分吸収能力(根吸水力)に優れた品種を開発するための基礎的知見を得る目的で、オランダのワーゲニンゲン大学が開発した、染色体におけるDNA配置を明らかにしたバレイショ集団(マップ集団)と国内バレイショ遺伝資源での両形質の遺伝変異を明らかにする。本研究は、北海道大学の研究代表者とワーゲニンゲン大学の海外共同研究者との国際共同研究として実施する。本年度に得られた成果の概要は下記の通りである。 1.昨年度まで2年間にポット栽培して根量のQTLを調査したマップ集団(101系統、親2系統を含む)の中から根量の大きく異なる10系統を選び、栽培2品種とともに天水条件下の圃場で栽培し、ポットでの調査と同じく萌芽後35日目に根を含む部位別の乾物重と形態形質を測定した。根重ではポットでの結果と圃場での結果の間に高い正の相関関係が認められた。また、部位別の乾物重割合でも高い正の相関関係が認められた。従って、ポット栽培で明らかにした根量のQTLは圃場栽培での根形質の遺伝的変異を説明できるものと推察した。 2.マップ集団(101系統、親2系統を含む)の全てを天水条件の圃場で栽培し、生育ステージ(萌芽期、開花始め、開花終期、黄変期、枯凋期)を測定した。早晩性に関係する開花終期、黄変期および枯凋期の形質間には高い正の相関関係が認められ、またポットでの根量との間にも高い正の相関関係が認められた。黄変期についてQTL解析を行ったところ、根量のQTLとほぼ同一の場所(5番染色体基部)に極めて高いQTL(LOD値:C親で10、E親で30)を検出した。また根量では存在しなかったQTLが10番染色体(LOD値:両親とも3)で検出された。すなわち、早晩性の遺伝的差異は根量の遺伝的差異と密接にリンクしているが、この他にも早晩性に影響する遺伝的要因が存在すると解釈でき、実験当初の仮説と一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
バレイショの吸水能力に密接に関係すると考えられる根量のQTLが世界で始めて明らかになった。また、早晩性に関して検出された2つのQTLの中で一つは根量のQTLと一致したが、他の一つは一致しなかった。このことは、根量と早晩性とは密接に関係しているものの、根量と無関係な早晩性のQTLを利用することによって、多根量の系統の早晩性が変化することを示唆しており、早生で多根量の系統を育成するための育種選抜において極めて有用な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は研究の最終年度として、天水条件の圃場と雨よけハウスを設置して土壌を乾燥条件にした圃場でマップ集団を栽培して、地上部と塊茎の成長および塊茎収量に及ぼす土壌乾燥の影響について系統間の差異を明らかにし、またこれに関与するQTLを同定する。その後、すでに明らかにしている根量と早晩性に関するQTLと乾燥抵抗性に関するQTLとの関係を解析する。これまで得られている成果については2012年6月26-29日にスコットランドのDundy市で開催される国際根研究集会で発表し、その内容をAnnalus of Botanyに投稿する。また年度末には成果報告書を英文で印刷する。
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Research Products
(6 results)