2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21380035
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
桜井 勝 金沢大学, 副学長 (80143874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩見 雅史 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (40193768)
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Keywords | エクジソン / 膜受容体 / 細胞死 / カイコガ / 前部絹糸腺 / 抑制因子 / オキシダーゼ / グルコース |
Research Abstract |
カイコガ幼虫前部絹糸腺は、20-hydroxyecdysone(20E)のgenomic及びnongenomic作用により、細胞死が完了する。一方、吐糸期前日までの前部絹糸腺は細胞死抑制因子を分泌し、早期の細胞死を抑制している。昨年度までの研究では、タンパク性と非タンパク性物質の両者が細胞死抑制活性をもつことを示し、タンパク性のものがグルコース酸化酵素(GOD)であることを示唆してきた。 本年度は、細胞死抑制因子の実体を明らかにしその作用機構に迫った。コウジカビGOD標品を用いた実験、また、GODの基質であるグルコースを除いた培養液を用いた実験などから、細胞死抑制因子はGODであり、GODの反応産物である過酸化水素が直接細胞死を抑制していることを示した。絹糸腺や繭でのGODの活性染色等から、GODが吐糸期に絹糸と共に前部絹糸腺より繭の表層に吐き捨てられることをあきらかにした。したがって、前部絹糸腺は、抑制因子であるGODを喪失し、体内エクジステロイド濃度が上昇することにより細胞死が進行し、絹糸腺の崩壊が生じることが示唆された。これまで吐糸のための単なる管と考えられていた前部絹糸腺がGODを保持することで細胞死を自己制御している可能性、吐糸行動が環境適応のために繭を作るだけではなく、前部絹糸腺という幼虫特異的組織を予定細胞死により速やかに崩壊・除去するためにも重要な行動である可能性が示された。 この研究成果は、論文掲載雑誌(FEBS Journal)で高く評価され、表紙に絹糸腺や繭でのGODの活性染色結果が掲載された。
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