2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21380122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大竹 二雄 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (20160525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天川 裕史 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (60260519)
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Keywords | 魚類 / 耳石 / 安定同位体比 / 回遊 / 集団構造 / アユ / ビワマス / ウナギ |
Research Abstract |
1)アユの回遊と遡上個体群構造:岩手県大槌湾に流入する鵜住居川で採集されたアユ5個体の耳石核部分、および河川生活期に当たる耳石縁辺部のSr安定同位体比(^<87>Sr/^<86>Sr)をそれぞれSIMSを用いて分析を行った。その結果、4個体の耳石内2ヶ所の同位体比に有意な違いを認めることができず、また鵜住居川の同位体比ともほぼ同一と認められた。これより大槌湾のように閉鎖的な湾に流入する河川においては母川回帰するアユが多いことが明らかになった。 2)ビワマスの琵琶湖内回遊と遡上個体群の集団構造:琵琶湖流入5河川で採集された稚魚43個体の耳石のSr安定同位体比と微量元素組成を分析した。その結果、Sr安定同位体比とSr/Caが母川判別の生物指標として有効であることが示された。そこでそれらを用いて各河川の遡上魚の母川判別を行ったところ、回帰魚の割合は0~50%と河川による違いが大きかった。遡上個体を遡上河川の地理に従って琵琶湖西部・北部・東部の4地域にまとめて解析したところ、母川(孵化河川)と同一地域内の河川に遡上した個体の割合は21~71%であった。これよりビワマスは母川回帰性が低いものの母川に近隣する河川に遡上する傾向が強いことが示された。 3)産卵親ウナギの成育河川(地域)の特定と産卵回遊:マリアナ諸島西方のウナギ産卵海域で採捕された親ウナギ7個体の耳石Sr安定同位体比を分析し、それらの結果を中国(6)、台湾(4)、韓国(5)、日本(14)の計29河川の河川水の分析結果と比較した(日本7河川は文献データ)。その結果、7個体中3個体の同位体比が0.7092以下であり、中国、台湾、韓国の各河川水の同位体比に比べて有意に低く、日本の太平洋岸に位置する河川水の同位体比に近かった。このことは日本で成長したウナギが産卵場に回帰して産卵していることを示す。すなわち、日本に分布するウナギが再生産に寄与する個体群であることが明らかになった。
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Research Products
(10 results)