2010 Fiscal Year Annual Research Report
水産重要魚類稚魚の成育場としての河口・沿岸域生産力の定量評価
Project/Area Number |
21380124
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 洋 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60346038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 亮秀 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80263127)
富永 修 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (90246489)
松石 隆 北海道大学, 水産科学研究科, 准教授 (60250502)
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Keywords | 稚魚 / 成育場 / 河口域 / 食物網 / 生態系モデル / 基礎生産 / 初期減耗 / アミ類 |
Research Abstract |
平成22年度には、由良川下流域から丹後海にわたる水域で、原則として毎週1回の高頻度調査を実施し、年間50回近い調査により、水温、塩分、栄養塩、クロロフィル、プランクトン、ベントス、魚類の時空間分布構造を詳細に調べた。丹後海では河川水量の多い春季に植物プランクトン現存量が増大し、それに対応してアミ類卓越種であるニホンハマアミのバイオマスが増加した。これは、本種が植物プランクトンを主食するという安定同位体比分析結果と一致した。また、由良川の下流域ではイサザアミが卓越することを確認し、本種についても生産生態研究を開始した。底生微細藻類の生産は夏季に高く、植物プランクトンの生産には河川からの栄養塩供給、底生微細藻類の生産には照度が重要な役割を果たすことが示された。スズキは本海域では12月下旬から2月上旬にやや沖合で産卵する。着底期仔稚魚は2,3月に由良川河口域の水深5~15mの海域の底層に集積し、河川水量が減少して底層から海水が河川へ遡上し始める4月頃から、一部の稚魚が河川へ移動することがわかった。スズキ稚魚耳石の精密な解析から、河川遡上個体は、遡上開始時には海域残留個体よりも栄養状態が悪く小型であるが、河川内に豊富に分布するイサザアミを摂餌して、降海期の初夏には栄養状態、成長ともに海域残留個体に追いつくことが明らかになった。一方、河川水の流入のない和田浜では基礎生産速度が低く、浅海底では潜砂性で肉食性のArchaeomysis属2種のアミ類が卓越しており、由良川河口域とは全く異なる生物生産構造の存在することが示唆された。平成22年度の詳細な調査データをデルフト3Dモデルに組み込むことにより、平成21年度バージョンよりも遙かに再現性の高いモデルを構築した。また、魚類生産へ至るエコパスモデルにより、鍵となる生物群データをもとに本海域における生物生産構造の骨格を完成させた。平成23年度は、仔稚魚の生産において最も重要な3~6月について、詳細な生態系モデルの構築を目指す。
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Research Products
(41 results)