Research Abstract |
農業水利構造物のストックマネジメントは,適切な維持管理,効率的な更新整備により,既存ストックの有効活用の観点から長寿命化をはかり,ライフサイクルコストを低減するものであり,社会的要請も大きい.しかしながら,現時点においてストックマネジメントの対象は,コンクリート構造物が主体であり,土構造物を対象としたものはほとんどない.これは,土構造物の性能劣化診断および性能劣化予測がコンクリート構造物のそれと比較して困難であるからに他ならない.本研究では,ストックマネジメントのための土構造物,特に溜池の性能劣化予測システムの確立を目指すものである.本研究は,次のステップに従い,研究を進める.ステップ1:非破壊検査による溜池堤体の計測システムの構築,ステップ2:溜池性能劣化の総合的診断技術の確立,ステップ3:溜池性能劣化モデルの構築,ステップ4:溜池性能劣化予測モデルの再構築,ステップ5:GISによる溜池性能劣化予測システムの開発である.本年度は,上記5ステップのうち,「ステップ1非破壊検査による溜池堤体の計測システムの構築」として,溜池の満水時と水位低下時に比抵抗電気探査と高精度表面波探査を実施し,堤体の地盤強度,土質および貯水による含水比の変化を捉えた.また,空間統計学のKrigingを用い,それぞれの探査方法の長所を補間することにより探査結果をより高精度にするとともに,溜池堤体内の状態を把握するための合理的な計測システムを構築した.
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