Research Abstract |
本年度は,比抵抗電気探査と高精度表面波探査結果を用いて,グラウト充填領域の推定を行った. ため池の漏水対策の一つとして堤体への遮水グラウト工法がある.グラウトの出来形を評価する場合,ボーリングのような線的な調査ではなく,面的に捉えられる探査方法が望まれる.ここでは,グラウトが施工されたため池堤体で表面波および比抵抗電気探査を行い,得られたS波速度V_s,比抵抗値ρ_a,貯水位の変化による比抵抗変化率rの3つのパラメータから,自己組織化マップSOMによるグラウト充填領域および土質の推定を行った. グラウトは堤体内の間隙を埋めるように充填されるため,堤体内の間隙が減少する.そこで,測線Aにおける高水位時(WL=30.43m)と低水位時(WL=25.64m)におけるρ_aを測定し,その変化率rを求めた.貯水位以外の計測条件はすべて同一であるため,結果が異なる地点は堤体内の間隙を水が移動したことによる影響であると考えられる.したがってグラウトが間隙に充填されている場合には,グラウトがない場所と比べて水の移動が活発に行われないこと,そもそも間隙が少ないことが考えられるため,貯水位の変化によるρaの変化は少ないはずである.すなわち,V_s,ρ_aに,rを組み合わせて解析することにより,堤体の含水率を反映させた分類ができることになる. また,自己組織化マップSOMの利用により,3次元以上のデータが扱えることになり,より高精度でかつ多種類の探査データを同時に考慮することが可能なシステムを開発することができた. また,飽和-不飽和浸透流と熱移動のカップリング解析結果と1m深の地温データからモンテカルロフィルタを用いたデータ同化を適用し,溜池の性能劣化を評価する手法を開発した.
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