2010 Fiscal Year Annual Research Report
乳腺組織形成と乳腺腫瘍におよぼす脂肪細胞の新たな役割とその分子基盤
Project/Area Number |
21380177
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 和弘 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (30192561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡松 優子 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教 (90527178)
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Keywords | 脂肪細胞 / 乳腺発達 / 乳癌 / レプチン / プロラクチン / 母性行動 / ストレス / 脳機能 |
Research Abstract |
これまで脂肪細胞の状態が大きく異なる食餌性肥満(HFD)マウスと対照(ND)マウスを用い、HFD群未妊娠の乳腺では導管の分枝頻度が低下し、その細胞組成や間質構造にも異常があること、HFD群妊娠期乳腺においても腺房構造形成遅延と機能成熟の遅れがあることを明らかにした。ここでは出産後の泌乳期における肥満影響の解明を試みたが,HFD群のマウスでは母性行動異常により授乳がほとんどの個体でみられず、ND群との乳腺構造の単純な比較は意味がないと思われた。そこで、肥満と母性行動の関連ついて定量的解析を試みた。HFD群、ND群両間で妊娠率、胎児数に差はなかったが、肥満群では全ての胎児を娩出できた個体は35%と対照群(85%)の半数以下であった。また対照群では妊娠中の巣作り行動が80%の個体で観察されたのに対し、肥満群では70%の個体は巣作りをしなかった。さらに、出産後の育児(仔マウスを集合させるか否か)についても対照群では90%の個体で観察されたのに対し、肥満群ではわずか15%の個体のみであった。この時,血中のグルコース、遊離脂肪酸、プロラクチン、プロゲステロン、エストロゲン濃度に両群で差はなかったが、レプチン濃度に大きな差が認められた。つまり食餌性肥満は母性行動に大きく影響し、妊娠期に見られる巣作り行動や出産後の育児行動を抑制することが明らかとなった。レプチンの作用は主に脳視床下部弓状核を介することが知られているため,母性行動抑制作用はレプチンあるいは他の脂肪細胞分泌因子が中枢機能に影響を与えた結果であると考えられた。また本結果より人の肥満した母親は授乳期間が短いこと、肥満やストレスによる牛乳量の低下といった事象のメカニズム、特に中枢経路を解明するモデルとして食餌性肥満マウスは有用であることが示された。
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Research Products
(5 results)