2009 Fiscal Year Annual Research Report
分泌性ホスホリパーゼA_2酵素群の生体内機能に関する総合解析
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21390027
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
村上 誠 Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research, 東京都臨床医学総合研究所, 副参事研究員 (60276607)
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Keywords | ホスホリパーゼA_2 / トランスジェニックマウス / ノックアウトマウス / 炎症 / 精子 / リン脂質 / 脂質メディエーター / 脂肪酸 |
Research Abstract |
膜グリセロリン脂質のsn-2位を加水分解して脂肪酸とリゾリン脂質を生成する酵素ホスホリパーゼA_2(PLA_2)には多数の分子種が存在するが、細胞外に分泌されるsPLA_2ファミリーの各アイソザイムがどのような生体内機能を担っているのかについては殆ど不明であった。本研究は、各sPLA_2アイソザイムのトランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスを用いて、それぞれの生体内機能を解明することを目指すものである。本年度は、以下の成果を得た。 (1)sPLA_2-IIIトランスジェニックマウスが加齢に伴い全身的な炎症を自然発症することを見出した。 皮膚の病理所見はヒトのアトピー性皮膚炎や乾癬に類似しており、本酵素がこれらの皮膚疾患に関わる可能性について提唱した。本研究成果はBiochem Jに論文発表した。 (2)sPLA_2群の雄性生殖における時空間的ネットワークを、以下の如く解明した。 (i)sPLA_2-IIIは精巣上体管腔上皮細胞に発現しており、内腔を通過する精子細胞の膜に作用してリン脂質脂肪酸のリモデリングを制御することが判明した。sPLA_2-IIIノックアウトマウスでは精巣上体における精子膜リモデリングが損なわれるため精子の成熟が妨げられ、その結果運動性が低く、受精能を欠失した異常精子となる。このため欠損マウスの雄を交配に用いると産仔数が激減する。 (ii)sPLA_2-Xは精巣の精原細胞に発現しており、成熟精子のアクロソームに貯蔵される。精子が活性化してアクロソーム反応を起こすと、活性型sPLA_2-Xがアクロソームから放出され、精子のアクロソーム反応を更に増強する。sPLA_2-Xノックアウトマウスの精子は、運動性は正常であるがアクロソーム反応が減弱し、その結果卵子との受精率が部分的に低下する。sPLA_2-Xの酵素反応代謝産物であるLPCをノックアウトマウスの精子に添加すると受精率が回復する。 これらの研究成果は、二種のsPLA_2の全く新しい機能、すなわち雄性生殖の時空間制御を示した初めての知見であり、J Clin Investに連報で採択された。
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Research Products
(18 results)