2009 Fiscal Year Annual Research Report
多環芳香族炭化水素類が環境・生体で新たに獲得する毒性に関する戦略研究
Project/Area Number |
21390034
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
早川 和一 Kanazawa University, 薬学系, 教授 (40115267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 信雄 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (60242476)
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Keywords | 多環芳香族炭化水素類 / 酵母two-hvbrid法 / 構造活性相関 / 魚鱗 / エストロゲン様活性 / 抗エストロゲン様活性 |
Research Abstract |
目的:原油タンカーやパイプラインの事故、あるいは化石燃料の燃焼等に伴って大量放出された多環芳香族炭化水素(PAH)類が、水・大気・土壌中で反応し、また動物体内で代謝されて新たな毒性を獲得する機序とそのリスクを明らかにするために、本年度は以下の3項目において実験を行った。 研究成果 1) 酵母two-hybrid法を用いたPAHQの内分泌かく乱作用の評価 今回試験した20種のPAHQのうち、3種(1,2-CQ,BaP-3,6-Q,BaP-7,8-Q)がエストロゲン活性を示し、最も活性の強かったbenzo[a]pyrene-[3,6]-quinoneではE_2 100nMの47%のβ-galactosidase産生を誘導した。抗エストロゲン活性を測定したところ、11種のPAHQで活性が見られ、活性の強かった1,2-chrysenequinone, benzo[a]pyrene-[7,8]-quinoneではそれぞれE_2 1nM存在下で59%、56%のβ-galactosidase産生を抑制した。 2) 構造パラメータ計算 酵母two-hybridアッセイ法によりエストロゲン様/抗エストロゲン活性が見られたPAHQの構造的及び物理化学的パラメーターとの関係について考察した。エストロゲン様活性を示す3種のPAHQは、O-H distance、第1イオン化エネルギー、双極子モーメント、log Pのパラメーターがそれぞれ10.290から11.519Å,8.526から9.029eV、4.909から5.556debye、3.462から3.782の狭い範囲に存在した。抗エストロゲン活性を示す11種のPAHQでは、第1イオン化エネルギー、log Pがそれぞれ8.526から9.201eV、2.459から3.782の比較的狭い範囲に存在し、これらのパラメーターの範囲が活性を示すための指標となる可能性が示唆された。 3) PAHQの魚鱗に対する影響評価 1)の酵母two-hybrid法を用いて解析した結果、最も強いエストロゲン様活性を示したPAHQ(BaP-7,8-Q)を魚鱗のin vitroの評価システムを用いて、骨芽細胞と破骨細胞に対する影響を評価した。その結果、魚鱗では骨芽細胞と破骨細胞の両方の細胞活性を抑制することが判明した。エストロゲンは骨芽細胞と破骨細胞の両方の活性を上昇させるが、PAHQは抗エストロゲン活性を示した。今後、PAHOの毒性機構を詳細に調べていく予定である。
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Research Products
(26 results)