Research Abstract |
VEGFRはR1からR3まで同定されている。VEGFR1は血管内皮細胞に加え,マクロファージにも発現することが明らかになっているが,その機能は不明な点が多く,また,肝障害後の再生への関与について実証的なデータは乏しい。VEGFR1 tyrosine kinase欠損マウス(Vegfr1 tk-/-)にVEGF受容体を誘発したところ,著しい生存率低下および肝障害増悪がみられ,肝臓において様々な増殖因子発現が低下していることを報告した。今年度は,APカロリー肝障害後の肝細胞増殖や類洞壁再構築と増殖因子発現の関連性をまとめると共に,その過程に関与する細胞を明らかにするために,VEGFR1陽性マクロファージの障害部位における分布について検討した。野生型マウス群(WT)およびVegfr1 tk-/-群にAPAPを単回投与(300mg/kg,ip)した。投与後24または48時間に肝臓を採取し,肝組織におけるmRNA発現の検討,電子顕微鏡観察および免疫組織化学的検討を行った。Vegfr1 tk-/-において,再生因子として知られるHGFおよびTNFαのmRNA発現減少を伴う有意な肝細胞増殖抑制が認められた。また,血管新生因子として知られるbFGFおよびTGFβのmRNA発現減少を伴う顕著な類洞構造破壊がみられた。免疫組織化学的検討により,WTにおいては肝壊死領域にVEGFR1陽性遊走マクロファージの集積が確認されたが,Vegfr1 tk-/-ではほとんど認められなかった。Vegfr1 tk-/-のAPAP肝障害増悪の原因として,肝再生因子や肝血管新生因子の発現低下による類洞壁再構築および肝修復能低下が考えられ,VEGFR1陽性マクロファージの遊走減少を伴っていた。したがって,VEGFR1シグナリングはAPAP誘発性肝障害後に肝血管新生因子や肝再生因子を増強することで,類洞壁再構築や肝修復を促進することが示唆され,VEGFR1陽性マクロファージがその過程に関与する可能性が考えられた。
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