2009 Fiscal Year Annual Research Report
血液神経関門の人為的改変:難治性末梢神経疾患新規治療法開発へのアプローチ
Project/Area Number |
21390268
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
神田 隆 Yamaguchi University, 大学院・医学系研究科, 教授 (40204797)
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Keywords | 血液神経関門 / 末梢神経障害 / 内皮細胞 / 血管周細胞 / トランスポーター |
Research Abstract |
ヒト末梢神経神経内膜毛細血管由来内皮細胞(以下BNB構成内皮細胞)と末梢神経毛細血管由来血管周細胞からなるin vitroの培養系を構築する。これらの2種の細胞株は,申請者の研究室でヒト剖検材料から分離した一次培養細胞に温度感受性SV40遺伝子,ヒトtelomerase遺伝子をレトロウイルスを用いて導入し,不死化して世界に先駆けて確立したものである(Shimizu F et al., manuscript in preparation)。 [方法と結果]プロジェクト1:トランスポーターの機能的制御による末梢神経軸索周囲環境の改変技術と、レセプターを利用した神経栄養因子の効率的な末梢神経実質内移入法の確立 本プロジェクトの第1段階として、初年度はBNBに発現するトランスポーター蛋白、レセプター蛋白をメッセージレベルおよび蛋白レベルで解析した。BNB構成内皮細胞では、BBB構成内皮細胞と類似したトランスポーター・レセプター蛋白発現パターンを有していたが、OAT3の欠損が確認できた。OAT3はHVA等を血管内へと排泄するefflux transporterであり、近傍にシナプス構造の存在しないBNBでの欠損は合目的的と考えられ、BBB構成内皮細胞、BNB構成内皮細胞の間に明らかな分子的相違が見られる最初の証拠が得られた。 プロジェクト2:ヒトBNB破壊における内皮細胞上のkey moleculeの同定と、同物質の機能的阻止による新規免疫性神経疾患治療薬の開発 現在得られる唯一のBNB破壊修復薬は副腎皮質ステロイド薬であり、初年度は同薬のBNB構成細胞に対する効果を検証した。100nMのhydrocortisoneはBNB構成内皮細胞のclaudin-5発現を増強し、BNB構成血管周細胞のBDNFを増加、VEGFを減少させることでBNB修復に寄与していることが考えられた。 [本研究の意義と重要性]世界で初めての開発となるヒトBNB構成細胞株を用いた研究であり、難治性疾患の多い末梢神経障害の新規治療法開発の起爆薬となりうる研究である。BNB構成内皮相棒のトランスポーター解析などの基礎実験はすでに一定の成果を得ており、次年度以降の末梢神経障害原因物質の同定、同物質の阻止実験へ向かう基盤が整えられた。
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