2010 Fiscal Year Annual Research Report
血液神経関門の人為的改変:難治性末梢神経疾患新規治療法開発へのアプローチ
Project/Area Number |
21390268
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
神田 隆 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40204797)
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Keywords | 血液神経関門 / トランスポーター / 血管内皮細胞 / 血管周細胞 / 末梢神経障害 |
Research Abstract |
プロジェクト1:BBBとBNBの本質的な違いを明らかにする。 [方法と結果]当教室で不死化細胞化に成功したヒト血液脳関門(BBB)由来細胞株(内皮細胞、血管周細胞)とヒト血液神経関門(BNB)由来細胞株(内皮細胞、血管周細胞)を用いて実験型を構成した。きわめて近似した免疫学的背景を持つと考えられるビッカースタッフ型脳幹脳炎(BBE)とフィッシャー症候群(FS)の患者血清を、BBB,BNB由来内皮細胞に投与、内皮細胞透過性とバリア関連タンパク質(claudin-5)の変化を見た。BBE患者血清は、BBB由来内皮細胞の透過性亢進とclaudin-5を減少させる効果があったが、BNB由来内皮細胞には何ら効果がなく、FS患者血清はいずれの細胞にも効果を持たなかった。BBEの中枢神経障害は、BBBに対する血清のアフィニティの高さが関与していること、BBBとBNBを構成する内皮細胞はそれぞれ異なったものであること等、新たな知見が示唆される結果であった。 プロジェクト2:ヒトBNB破壊における内皮細胞上のkey moleculeの同定と、同物質の機能的阻止による新規免疫性神経疾患治療薬の開発 [方法と結果]糖尿病性ニューロパチーではBNB破壊がおこり、末梢神経微小血管の基底膜肥厚がおこることが知られている。われわれは糖尿病での細胞毒性をあらわす重要な分子であるAGEをヒトBNB構成細胞に投与し、以下の結果を得た。(1)AGEはBNB構成内皮細胞のVEGFを増加させることでバリア機能を低下させる。(2)AGEは血管周細胞からのVEGF,TGFbeta放出を促し、これを介したTIMP-1増加によって基底膜肥厚をきたす、ことが明らかになった。VEGFが糖尿病性ニューロパチーにおけるBNB破壊のkey moleculeであることが証明され、BNB上でのVEGF阻止が糖尿病性ニューロパチー治療の重要なオプションであることが示された。 [本研究の意義と重要性]ヒトBNB由来細胞は世界に先駆けたオリジナル細胞であり、上記の結果は同細胞無しでは達成できない独自性の極めて高いものである。
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Research Products
(45 results)