2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21401020
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
山田 桂子 茨城大学, 人文学部, 准教授 (30344831)
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Keywords | テルグ語 / 日本語 / 辞典 / インド諸語 / 言語学 |
Research Abstract |
本年度は、テルグ人の海外移民がもっとも多い地域ミャンマーとシンガポールで調査を行った。12月末から1月初頭にかけて約2週間ヤンゴンをはじめとする地域を訪れ、テルグ人協会やヒンドゥー寺院、食堂などを訪問し、テルグ語でインタビューを行って調査した。その後シンガポールで約1週間滞在し、テルグ人コミュニティの訪問と文献資料の収集を行った。 今回ミャンマー調査では他の地域では得られない大きな発見があった。それはミャンマー特有の歴史・政治的状況から、この地域が他のテルグ人移民地域と非常に異なった言語状況になっていることである。マレーシアやシンガポールでは、英語がリンガフランカである中、テルグ語は母語・家庭内言語として維持され続けているが、ミャンマーでは公用語としてのビルマ語教育が徹底したため、テルグ語話者のほとんどが流暢なビルマ語使用者になっており、テルグ語を家庭内言語としてすら話せなくなっているということである。つまり、国の体制がテルグ語話者に与える影響が従来の想定以上に大きいこと、またミャンマーがテルグ語消滅のひとつの最前線(=限界線)であること、さらに英語教育を受けないミャンマー・テルグ人が、英語を用いる在外テルグ移民ネットワークから排除される可能性があることがわかった。 すでに昨年度までの調査で、グローバリズムが進んだ受け入れ国では移民たちのテルグ語が母国インドの標準テルグ語に近付いていることが判明していた。今回、経済発展が相対的に遅れた地域では逆に独自の移民言語が発達するどころか、消滅に向かったことが分かった。この成果を受けて、私は本研究の最終目的とするテルグ語辞典の見出し語や例文を、結局はインドのテルグ語に求めることが適切だと判断するに至ったが、そのこと自体はテルグ語の基本語彙・用法を定義する際の重要な判断材料を獲得したという点で、たいへん大きな成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的はテルグ語・日本語辞典(見出し語約6000語)を作成だが、辞書の完成という点では現在までのところ順調に進んでいる。見出し語の選定はすでに完了しており、表記方法など必要な形式・様式も決まっている。ただし、上記9の本年度の研究実績にも記述したように、当初移民言語のバリエーションを含めることをひとつの目玉にしていたが、過去3年間の調査の結果、インド国での標準語を中心にすることが適切であるとの判断に至った点が、当初計画より変更が必要となった点である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成24年度が本研究課題の最終年度にあたるため、1年間で目標としている辞書を完成する。これまで集めたデータベースをもとに、まだ意味や例文が記入されていない見出し語について、それを埋めて行く作業を行うとともに、まだデータ収集の終わっていない部分について最後のフィールドワークを行い、取りこぼしのある部分についての情報補充を行い、辞書を完成させる。
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Research Products
(1 results)