2009 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト初期国家形成期における穀物調理の専業化と集落の都市化
Project/Area Number |
21401033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
高宮 いづみ Kinki University, 文芸学部, 准教授 (70221512)
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Keywords | エジプト / 初期国家形成 / ヒエラコンポリス遺跡 / ナカダ文化 / 穀物調理 / 穀物倉 / 専業化 / 都市化 |
Research Abstract |
本年度(初年度)は、2月16日から3月19日にかけてエジプトアラブ共和国に渡航し、ヒエラコンポリス遺跡において発掘調査を開始した。同遺跡集落址内のHK24B地区において、トレンチA(5×5m)およびトレンチB(7×2m)を、それぞれ加熱施設と穀物倉の存在が想定される箇所に設置し、発掘調査を実施した。 その結果、トレンチAからは、ナカダ文化期(前3500年頃)に年代付けられる加熱施設が検出された。この施設(東西約8m、南北約7m)は、周囲を大型土器片と泥モルタルで建造された低い壁体に囲まれる半地下式である。内部に合計10基の大型甕(直径1m程度)が設置されていたと推測され、大型甕の内容物を比較的低温で処理した調理施設であり、ビールやオートミール調理の可能性が認められた。類似の加熱施設は同遺跡内で他に5箇所の検出例があるが、今回検出された施設は、大型で最も残りの良い施設の一つであり、壁体で甕を支えるユニークな構造であったことから、当時の加熱調理の実体解明に新たな手がかりを与えることになった。 トレンチBからは、直径1.5mの日乾レンガ造の円形施設が検出された。内部は未発掘であるものの、周囲から籾殻が多量に出土したことによって、穀物倉であることがほぼ確認された。従来古王国時代に年代付ける説があったが、今回観察した限りではナカダ文化期に年代付けられる可能性が高く、エジプト最古の円形穀物倉の例になるであろう。 加熱施設と穀物倉との関係は、今年度の調査では確認できなかったが、わずか数メートル以内の配置から、両者の密接な関係が推測された。
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