Research Abstract |
『本年度の目的』海洋環境から島弧環境へと変化する際の地下深部での現象(熟成)を理解する為に,アルバニア国に分布する海洋的オフィオライトと島弧的オフィオライトの中で,最も代表的な場所となり得る地点(岩体北部)におけるデータ採取を行うことである。特に,深部から浅部にかける物質/化学変化について明らかにすることを目的とした。 その結果は以下の通りである。(1)島弧的オフィオライトのマントル相当層(かんらん岩体)は,海洋的環境で形成された部分が島弧的環境によって改変を受けている様子が見えてきた。特に,最深部には,より海洋的環境が,より上部には島弧的環境の影響が強く残っていることが示唆された。(2)島弧的オフィオライトのかんらん岩体より上部に相当するはんれい岩層中に,島弧的環境で形成されている部分がある。この島弧的環境を示す岩相は,上部の火山岩類と関係がありそうである。(3)これらをもとに,同位体組成を測定した結果,海洋的部分からは,海洋的な特徴が,島弧的な部分からは,流体の付加の影響が残されていることが見えてきた。(4)海洋的オフィオライトのマントル相当層には,マグマの貫入による影響が多く記録されている。 これらの結果は,島弧におけるプレートの沈み込み帯とマグマシステムにおけるブラックボックスとなっていた島弧下のマントルでのマグマの発生と移動,マグマと既存マントルとの反応プロセスの素過程を理解するために重要な意義をもつ結果である。 来年度は,島弧深部の熟成程度の違いによる素過程の変化を解明するために,岩体ごとの熟成度とその違いによる影響を明らかにするとともに,沈み込むプレートから供給された流体の組成とその量について定量的に解明していくことを目指す。また,海洋的オフィオライトと島弧的オフィオライトの海洋的部分との比較を進める。
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