2010 Fiscal Year Annual Research Report
声道と音源の相互作用が音声の個人性に与える影響に関する研究
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21500184
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
竹本 浩典 独立行政法人情報通信研究機構, ユニバーサルコメディア研究センター超臨場感システムグループ, 専攻研究員 (40374102)
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Keywords | 音声生成 / 音源 / 声道 / 相互作用 / 個人性 |
Research Abstract |
下咽頭腔は、咽頭腔から喉頭腔と左右の梨状窩という3つの小さな腔が分岐した構造をなしている。従来の音響解析手法である縦続音響管モデルでは、喉頭腔、咽頭腔、口腔という主声道に対して左右の梨状窩は分岐管として扱われてきた。そして、左右の梨状窩は声道伝達関数にそれぞれ1つの零点を生じ、零点は互いに独立していることが知られていた。すなわち、一方の梨状窩の形状を変化させても、他方の梨状窩に由来する零点の周波数は変動しない。 しかし、MRIで計測した下咽頭腔を3次元音響解析したところ、新しい知見が得られた。左右の梨状窩は非対称であり、それぞれの固有共鳴周波数も異なる。声道伝達関数に現れる2つの零点は、左右の梨状窩の固有共鳴周波数より一方は高く、他方は低くなる。また、一方の梨状窩の形状を微小変動させると声道伝達関数に現れる2つの零点の周波数が共に変化する。これらの事実は左右の梨状窩の間に音響的な相互作用があることを示す。そして、必ず周波数の低い零点は浅く、高い零点は深くなる。この原因を明らかにするために零点の周波数における音圧と粒子速度の分布パタンを解析した。その結果、周波数が高い零点では、左右の梨状窩の内部の空気が同相で振動し、低い零点では逆相で振動することが明らかになった。これより、左右の梨状窩が同相で振動する場合、梨状窩上部の空気は声道の長軸方向に沿って振動するため声道との音響的なカップリングが大きくなり、零点が深くなると考えられる。一方、逆相で振動する場合では、梨状窩上部の空気は長軸に対して垂直方向、すなわち左右方向に振動するため、カップリングが小さくなり、零点が浅くなると考えられる。これらの結果から、下咽頭腔は左右の梨状窩を2つの振動子とする連成振動系でモデル化できることが明らかになった。
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Research Products
(4 results)