2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500258
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐藤 徳 University of Toyama, 人間発達科学部, 准教授 (00422626)
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Keywords | 認知科学 / 実験系心理学 / 社会神経科学 / 自己 / エージェンシー感 |
Research Abstract |
エージェンシー感とは「行為を行ったのは自分だ」という主体としての自己の感覚のことである。本研究の目的は,エージェンシー感の潜在指標と顕在指標を区別し,両指標に反映される処理の違いを明らかにすることである。 まず,本年度は,自己の行為による結果は減衰して知覚されるという感覚減衰現象を潜在指標,誰が音を鳴らしたかに関する主観報告を顕在指標として,順モデルによる感覚結果の予測と先行思考と結果の一致性が両指標に及ぼす効果を検討した。Wegner et al.(2004)は,二人羽織を実験参加者に着用させ,自分の手は動かさず黒子役の手の動きを見るだけでも,動作の前に動作を知らせる情報を聞くと,実験参加者は自分がその手を動かそうとしたかのように感じることを示している。この結果は,運動指令の遠心性コピーがなくとも,先行思考と行為が一致するだけで,顕在的なエージェンシー感が高まることを示している。しかし,潜在指標はどうだろうか?また,順モデルによる感覚結果の予測は顕在指標には何の効果も及ぼさないのだろうか?本研究では,感覚減衰を先行思考と結果が一致し,自ら動作を行い遠心性コピーも利用できる自己条件,先行思考と結果が一致するが,遠心性コピーは利用できない予告あり条件,予告も遠心性コピーも利用できない予告なし条件,ただ音を聞くだけの統制条件の4条件を設け,潜在指標と顕在指標への影響を調べた。 結果は,感覚減衰は自己条件のみで見られるのに対し,主観報告では,自己条件>予告あり条件>予告なし条件の順にエージェンシー感が高くなるというものであった。本結果は,感覚減衰は順モデルによる予測に基づくのに対し,主観的なエージェンシー感は順モデルと先行思考と結果の一致性の双方に基づくことを示しており,両指標が異なる処理に基づくことを示唆している。
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Research Products
(2 results)