2009 Fiscal Year Annual Research Report
海馬スライス培養を用いた生後ニューロン新生過程の系譜解析
Project/Area Number |
21500299
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石塚 徹 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 講師 (10344714)
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Keywords | 神経新生 / 海馬 / レトロウイルス / スライス培養 / ニューロン / 神経科学 |
Research Abstract |
海馬歯状回顆粒細胞下部で生後に起こるニューロン新生は,学習・記憶をはじめとした海馬依存的な機能に関与している。海馬ニューロンネットワークの活動が神経新生を促進することが知られているが,これは神経幹細胞/神経前駆細胞の増殖が促進したためなのか,ニューロンへの分化が促進したためなのか,新生ニューロンの生存率が高まったためなのか,その詳細は明らかになっていない。平成21年度の研究では,海馬スライス培養とレトロウイルスによる新生細胞標識法を組み合わせることにより,1個の幹細胞/前駆細胞がニューロンあるいはグリア細胞へと分化していく過程を追跡し,その系譜解析を行った。その結果,海馬スライス培養における前駆細胞の系譜では,一方がニューロンで,他方がグリア細胞に分化する非対称分裂は認められなかった。また,一方がニューロンで,もう一方で表現型の同定できなかった細胞といった系譜もほとんど認められなかった。Hu(神経細胞マーカー)陽性細胞系譜とGFAP(アストロサイトマーカー)陽性細胞系譜の比較では,Hu陽性細胞系譜に属するものでは細胞分裂直後に消失するものが顕著に観察され,子孫細胞の生存率において有意な差が認められた。この傾向はProxl(顆粒細胞マーカー)陽性細胞系譜,NeuN(成熟ニューロンマーカー)陽性細胞系譜でも同様に認められた。すなわち,ニューロン新生過程において最終分裂から1~2週間に臨界期が存在し,その臨界期を乗り越えたものだけが成熟ニューロンへと成熟し,海馬ニューロンネットワークに組み込まれていくことが示唆される。
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Research Products
(2 results)