2010 Fiscal Year Annual Research Report
海馬スライス培養を用いた生後ニューロン新生過程の系譜解析
Project/Area Number |
21500299
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石塚 徹 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 講師 (10344714)
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Keywords | 神経新生 / 海馬 / レトロウイルス / スライス培養 / ニューロン / 神経科学 |
Research Abstract |
海馬ニューロンネットワークの活動が生後の海馬歯状回顆粒細胞下層での神経新生に影響することが知られているが,これは神経幹細胞/前駆細胞の増殖に影響したためなのか,ニューロンへの分化に影響したためなのか,それとも新生ニューロンの生存率が変化したためなのかその詳細は明らかになっていない。本研究では,海馬スライス培養とレトロウイルスによる新生細胞標識法を組み合わせることで,1個の神経幹細胞/前駆細胞を緑色蛍光タンパク質(EGFP)で標識し,その後28日にわたり追跡した後,標本を固定,1個のEGFP標識細胞に由来する子孫細胞の細胞種を免疫組織化学的に同定することで,ニューロンに分化していく過程を詳細に解析した。その結果,子孫細胞がHu陽性細胞(未熟なニューロン)に分化した系譜(ニューロン系譜)においては,細胞分裂直後にどちらか一方あるいは両方の細胞が消失する例が顕著に観察され,観察期間中に見られた細胞分裂の頻度から予想される子孫細胞の数と,実際に生き残った細胞の数との間に有意な差が認められた。細胞の消失は分裂後2~14日の間で起こり,この傾向はProxl(顆粒細胞マーカー)陽性細胞系譜,NeuN(成熟ニューロンマーカー)陽性細胞系譜の他のニューロン系譜においても同様に認められた。このことからニューロン新生過程において,最後の細胞分裂から1~2週間に臨界期が存在し,この臨界期を乗り越えたものだけが成熟ニューロンへと成熟し,海馬ニューロンネットワークに組み込まれていくことが示唆された。ニューロン系譜に見られる細胞の消失がアポトーシスによるものなのか,また標識細胞のアクティビティーを変えることで細胞の消失を防げるのか,この点を明らかにするために新たなレポーター分子の作製と解析への応用,オプトジェネティクスを用いた活動制御下での系譜解析を試みている。
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Research Products
(3 results)