2009 Fiscal Year Annual Research Report
覚醒下モデルマウスからニューロン活動を記録し、大脳基底核疾患の病態を解明する
Project/Area Number |
21500378
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
知見 聡美 National Institute for Physiological Sciences, 総合生理研究系, 助教 (30396262)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 運動制御 / モデルマウス / 大脳基底核 |
Research Abstract |
ジストニアは、四肢および体幹の異常運動を示す神経疾患であり、正確な病態については不明である。本研究では、ジストニアの病態を解明することを目的として、ヒトの全身性ジストニアの原因遺伝子を組み込むことによって作製したジストニアモデルマウスのニューロン活動を解析している。これまでに、マウスの頭部を無痛的に固定した状態で、覚醒条件下でニューロン活動を記録し、大脳基底核の出力部である淡蒼球内節のニューロンが、大脳皮質からの入力に対して長い抑制を伴う異常なパターンで応答することが、ジストニア症状の発現に関与していることを示唆するデータを得た。本年度は、マウスが実際に運動を行うときに、淡蒼球内節ニューロンにおいて大脳皮質の刺激によって惹起されたような長い抑制が観察されるのかどうかを明らかにするために、小型軽量のテレメトリーシステムを用いて、非拘束運動中のマウスのニューロン活動を記録するためのシステムを確立した。 マウス個体からのニューロン活動の記録は、遺伝子レベルおよびスライスレベルの実験から得られた知見を行動と結びつけるために不可欠なものであるが、これまでほとんど実験例がなかった。本研究により、頭部固定状態のマウスにおける覚醒下ニューロン活動の記録に加えて、非拘束運動中のマウスからニューロン活動を記録するためのシステムを確立した。この記録システムの確立は、これまで抜け落ちていた個体レベルでの電気生理学的解析の進展を促し、物質-ニューロン活動-行動という神経機能の統合的な理解の実現につながると考えている。また、ジストニア症状発現の機構を明らかにすることが出来れば、効果的な治療法の開発に役立つことが期待できる。さらに、ジストニアのモデルマウスにおいて、大脳基底核ニューロンの活動の異常と、運動の異常との相関を解析することにより、大脳基底核による運動の制御機構の理解にも大きく貢献できる。
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