Research Abstract |
生物学研究の促進には実験動物資源の保存と増産が重要である。しかし,シリアンハムスターの系統保存法として配偶子の凍結保存は容易ではない。そこでより簡便な卵巣凍結保存法を活用するべく操作手技の簡便化を検討した。卵巣採取時の週齢は,卵巣が小さく,かつ,搬送が必要な可能性などを考慮して個体として扱いやすい離乳直後の3週齢が良いと思われた。融解卵巣の借腹雌への移植時の麻酔は,注射による麻酔よりも麻酔深度調整が容易で導入および回復が非常に早いガス麻酔(イソフルレン)が簡便かつ効果的であった。卵巣移植手術の卵巣嚢切開時の出血軽減に用いる血管収縮剤としてはエピネフリン液よりもナファゾリン液が有効であった。凍結時の卵巣サイズの影響と疾患モデル動物への適用性を調べるため,心筋症モデルJ2N-k系(毛色:白色)と正常対照系統J2N-n系(毛色:白色)の3週齢個体の卵巣を,分割無し(長径約3.5mm,短径約2mm),2分割(長径約2mm,短径約1.5mm),4分割(長径約1.5mm,短径約1mm)の3条件でそれぞれガラス化凍結保存した。過去の研究で4分割凍結卵巣にてすでに産仔が得られていることから,J2N-n系由来の凍結卵巣のうち,分割無し卵巣と2分割卵巣を解凍し,それぞれ3個体と6個体の借腹雌(Slc:Syrian,毛色:野生色)の卵巣嚢内に移植した。術後回復したのち,J2N-n系雄と交配して産仔の毛色試験を行ったところ,2分割卵巣移植雌(6匹中1匹)で移植卵巣由来産仔が得られたことから,凍結保存時の卵巣サイズは,手間をかけて小さくする必要なく,2分割程度,すなわち約2ミリ角以下にすればよいことがわかった。また,卵巣凍結保存は疾患モデルハムスターへも適用可能であることが確認できた。次年度は,この成果を元にスナネズミの卵巣凍結保存を試みる予定である。
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