2010 Fiscal Year Annual Research Report
ディーセント・ワークと企業の社会的責任ー日英比較による生活経営学的考察ー
Project/Area Number |
21500718
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
斎藤 悦子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (90298414)
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Keywords | 企業の社会的責任(CSR) / ワーク・ライフ・バランス / 生活経営学 / 市民社会 / ガバナンス / 新しい公共 |
Research Abstract |
(1)具体的内容 既に実施した日本と英国の企業の社会的責任(以下、CSRとする)の実態に関するCSR報告書の比較分析において、英国の報告書の方がワーク・ライフ・バランス、ジェンダー平等について多くの記載があることが見出された。英国のCSR研究で用いられているGrosser & Moon(2006)の方法論の枠組みから「市場」「政府」「市民社会」の3要因を日本のCSR研究に当てはめ、これまでの日本のCSR研究では着目されてこなかった「政府」と「市民社会」要因について日本のCSRの現状と展開を検討した。「政府」「市民社会」とCSRの関係を考察するにあたり、日本企業において取組が進んでいるワーク・ライフ・バランスに絞り、「政府」要因を行政で実施されているワーク・ライフ・バランス方策、「市民社会」要因を市民としてのワーク・ライフ・バランス実現の活動とし、それぞれがいかなる関係を結ぶことができるのかを事例研究によって明らかにした。事例は東海地方のA市の男女共同参画室のワーク・ライフ・バランス推進方策の実践をめぐる行政と市民、企業の連携過程についてである。 (2)意義・重要性 日本においてCSRと行政や市民との関係を詳細にしたものはない。企業は本来、政府や市民社会とも関わりが深く、企業市民としての立場に立っている。しかし、これまでの企業においては地域貢献活動を除き、政府や市民社会と連携した活動を実施することはまれであった。本事例は、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、企業と行政が連携し、市民社会を創造していくという企業と社会の新しい姿を展望し、CSR論の新たなあり方を示したこと、政府、市民社会という生活者側から、CSRを捉え直す生活経営学的視点を持つことに意義がある。また、重要性は、生活経営学的視点により、企業と生活者の関係がコーポレート・ガバナンスから生活経営ガバナンスを含み、新しい公共を創造する可能性をもつことを指摘した点である。
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Research Products
(3 results)