Research Abstract |
高齢者施設では,摂食困難者に対し各人の摂食機能に応じて料理を刻んだり,それらや飲み物に増粘剤を添加して食べやすくする工夫をしているところが多い。しかし,その実態は施設によって大きく異なるようである。そこで主として増粘剤の使用状況に着目し,その実態を明らかにすることを目的に質問紙調査を行った。 対象は,千葉県,埼玉県,神奈川県,栃木県,群馬県,茨城県の特別養護老人ホーム512施設とし,郵送法で調査した。回収率は62.7%であった。平均入所者数は67±24人,平均年齢は85±2歳,女性/男性は4.4であった。 身体状況と対応する食事形態は,同じ身体状況でも食事形態は2~3段階と幅があった。摂食困難者に対する食事の工夫は,増粘剤の使用はほぼ100%で,その他あんかけ料理やゼラチン,寒天の使用のほか,市販介護食品も64%が使っており,その使用理由は簡便性,栄養性,水分補給等であった。現在/過去使用の増粘剤は60種類出てきたが,同じ商品名でまとめると24種類であった。使っている理由で多かったのは,「味・色・匂い等がよい」「とろみ性が良い」「簡便である」等で,逆に使用しなくなった理由はそれらが悪いからであった。とろみの粘度を決めている人は介護職員,管理栄養士等が多かったが,実際の調製者は介護職員と調理師・調理員が多かった。介護職員や調理師・調理員への指導の重要性が明らかとなった。とろみ液の調製法は0「様子を見ながら目的の粘度まで入れる」が約70%と多く,使用に当たって困っていることは,「用途・適正」「簡便性」「とろみ性」「経済性」等であった。増粘剤によってとろみの付き方が大きく異なることが問題であることも分かった。各食事形態を施設ではどのように呼んでいるかを聞いたところ,形態ごと17~37種類の呼び名があり,またそれぞれに増粘剤を加えてとろみ液にしたときの呼び名も統一性がなかった。これらの統一を図れば,介護者が共通認識を持つことができ,とろみ液の調製法の問題点を解決する手助けになると考えられた。
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