2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500771
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
小林 美和 Tezukayama University, 現代生活学部, 教授 (70195824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨安 郁子 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (10123671)
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Keywords | 食文化 / 生活文化史 / 中世文化史 |
Research Abstract |
本研究は、日本の伝統的食文化の見直しが図られる今日において、その起点と位置づけられる室町時代の食文化を多面的に追究することを目的とする。中でも、従来専ら国文学の領域とされてきた室町時代物語は、この時代の生活文化の様相をリアルに伝えるという要素を持っており、食文化研究という分野においても、研究に裨益するところ大であると考えられる。就中、これら室町時代物語の伝本の多くは、絵巻や奈絵本の形態を持つものであり、絵画資料として、当時の生活文化を視寛的に今日に伝えている。従って、これちを実証的に究明することによって、当時の食生活、食文化の実態が明らかにたるという面も少なからず存在するといえる。こうした観点から、今年度は、室町時代の食文化の中で、大きな比重を占める禅宗寺院の食事文化について考察を進めた。具体的には、室町時代物語の1伝本である『東勝寺鼠物語』を主たる対象とし、当時の宗教行事である「月待行事」において繰り広げられる晩餐の実態を検証・分析した。そこには夥しい食材・食品が登場し、それはこの物語の往来物的性格を示すものでもあるが、同時に、今日かたらずしも明らかとなっていない室町期の禅宗寺院における精進料理の実態をしめすもととして注目される。すなわち、ここにみられる食事の構成は、たとえば一休宗純百年忌の記録にみられる「湯」と「斎」という2部立てのそれと近似するものであり、この物語が天正年間成立であることを考慮すると、この時代の禅宗寺院における法会の献立を反映するものであることが明らかである。
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