2010 Fiscal Year Annual Research Report
流星の質量を求める実習用可搬型流星電波観測教材の開発
Project/Area Number |
21500828
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 英人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 技術職員 (30376553)
|
Keywords | 流星電波観測 / 多地点電波観測 / 前方散乱レーダー / 自然科学教育 / GPS / 超高層大気 / 実習教材 / フィールドワーク |
Research Abstract |
本研究は、送信点と異なる場所に多数の受信点を配置し(多地点観測法)、流星が流れたときその飛跡に沿って生じるプラズマに反射した電波(以下流星エコーと呼ぶ)を、多地点で受信してその到達時間差と送信点-電波反射点-受信点の距離(測距)より流星の正確な飛跡を求め、流星の質量を求める教材の開発を目的としている。 本年度は次の2点を重点的に開発した。一つは、初年度(21年度)開発した測距用受信機の動作信頼性の向上と、流星到達時間差法と組み合わせるための鏡面反射条件を満たす流星エコーの検出方法の開発である。受信機の問題は、回路および使用素子の検討を行い、実験で最適なものを見出し、改良を施した。検出方法はソフト的にS/N比を向上させ、数は少ないが、鏡面反射条件を満たすものを検出できるようになった。実際に2010年12月のふたご群と2011年1月のしぶんぎ群で測距実験を行った。その結果、低温時においても安定して作動し、送信点-電波反射点-受信点の距離を求めることに成功した。二つ目は、各観測点での到達時間差より流星の三次元ベクトルと速度を求める方法の確からしさを数値シミュレーションで検討を行った。その結果、この方法で求められた流星の位置は、計算結果と調和的であること、初年度の観測で流星を捉えられない空間的領域があることは、送信偏波の方向を考慮すると説明できることがわかった。そこで、2010年7月下旬にみずがめ座8南流星群を目標に観測を行い、数値シミュレーションから導き出された偏波の方向を考慮した4つのビーコン波を利用し、9カ所の受信地点を配置して観測に望んだ。その結果、捉えられない時間帯の問題は解決した。 また、大規模なレーダー施設である京都大学のMUレーダーを用い、流星体自身が発生する微弱なプラズマからのエコー(ヘッドエコー)を観測し、正確な飛跡を求めるための干渉計の補正法の検討と補正ソフトを引き続き開発した。さらに、開発した観測方法は大気中で起こる短時間現象の検出にも応用できると考えられ、宇宙線観測への適用を試みた例も発表した。 開発した教材のうち3KHzサンプリングのものは、東京大学教養学部の実習授業に取り上げられ、有効に教育的効果を発揮した。また、前年度の東海大学、甲南大学に加え、今年度は大阪市立大にもこの教材の普及活動を行った。さらに、国民向け(とりわけ若年層)には総務省・文部科学省後援のアマチュア無線家向けのフェアで講演を行い、聴衆者の関心を惹いた。 上記の成果は、関連する学会・研究会で発表を行った。
|
Research Products
(4 results)