2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500974
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 秀人 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (40217724)
|
Keywords | ポラニー / 化学者 / 科学研究 / ハンガリー |
Research Abstract |
平成23年度は、ポラニーの科学論文の収集分析、彼の実験ノートの探索、米国のポラニー研究者の聞き取りなどを計画していた。実験ノートの探索は、ポラニーの子息とのやりとりで非常に困難と判断した。またアメリカでの聞き取りは、震災での科研費分配の保留の影響で実施できなかったので、ポラニーの科学論文の収集と分析に研究を集中した。加えて、ポラニーのギムナジウム時代についても調査した。 その成果として、ブダベスト時代のポラニーについて多くのことが判明した。例えば、ポラニーがギムナジウム時代からすでに物理化学に関心を持っていたことが分かった。彼は、ネルンストの著書を読むなどして物理化学を学び、比熱について研究論文もどきのものすら書いた。ポラニーは後にこれを「無意味な」論文であったと回顧しているが、物理化学と彼の関わりが予想以上に早い点は重要な発見である。 ブダペスト大学に入学すると、ポラニーは、医学部のフェレンツ・タングル教授の研究室に出入りを許された。このタングルの研究の影響が、ポラニーのその後にとって、極めて重要であることが今期の研究で分かった。タングルは1872年に生まれ、ブダペスト大学を卒業した。ブダペストで職を得られなかった彼は、ベルリンのコッホの元で研究を続け、最先端の医学を身につけた。タングルの関心は生物学に近いもので、特に生物の代謝に向けられた。ポラニーは、タングルの研究室で代謝の研究を行った。その成果は、1910年、「水頭症液の化学への貢献」というハンガリー語の研究論文にまとめられた。この論文は、体液の密度、表面張力、熱伝導率という、物理化学のアプローチによって書かれている。コロイドゲルの吸着現象にも着目したこの研究は、ポラニーのその後の吸着現象の研究につながったと判断される。さらに、当時のブダペストの医学研究の水準が、欧州の中で高いものになりつつあったことも注目すべきと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通り、資料の分析が進んでいる。それによる発見は、当初の計画以上である。ただし、東日本大震災の影響で一時科研費一部の分配が留保されたため、海外出張を次年度に延期した点を勘案し(2)とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画通りに、研究成果のまとめにすすむ。また、昨年度実施できなかった海外出張による調査を実施する。
|
Research Products
(1 results)