2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500977
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三浦 伸夫 Kobe University, 国際文化学研究科, 教授 (20219588)
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Keywords | デユーフー / 数学史 |
Research Abstract |
デューラー『測定法教則』の影響を、その後継者たちのドイツ語とラテン語の作品における記述内容、用語法から考察した。『測定法教則』は若者の工芸家や建築家などを対象にドイツ語で書かれたたが、それはすぐラテン語に訳され、そのタイトルは『幾何学教程』となった。この表題の変容は、読者が実践家から学者たちへと変わったこと、学者たちの幾何学に、従来の理論幾何学のみならず実用幾何学が入り込んだこと、を意味する。他方、ヒルシュフォーゲル、ラウテンザク、レンカーなどドイツ語の継承者たちの作品は、学者たちのとは基本用語において相違している。一般的に彼らは、幾何学という言葉を平面図の意味に解し、計測法を新たに射影法と呼んでいる。すなわち彼らの幾何学は立体作図幾何学であり、またそれを実際に射影法によって描くことを目標とし、建築家や画家に個別の技法を与えることを目指した。デューラーは実践を理論づけること、すなわち実践家と理論家との統合を図り、幾何学を通じて絵画を学芸にまで高揚することを意図していたが、彼の後継者たちはそれらの伝統を再び分離してしまったのである。他方、ケプラー、クラヴィウス、ステヴィンなど学者たちは、それぞれの分野でデューラーの内容を詳細に検討し、補完していった。以上から、デューラー『測定法教則』は、従来の実践幾何学を学者たちの考察対象にする機会を与えたということが指摘できる。これは16世紀における幾何学の新しい展開と言えるであろう。
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Research Products
(1 results)