2009 Fiscal Year Annual Research Report
ライフサイエンス創成期における日本の生命倫理思想の歴史的研究
Project/Area Number |
21500980
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
林 真理 Kogakuin University, 工学部, 教授 (70293082)
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Keywords | 倫理学 / 生命倫理 |
Research Abstract |
現在でも広く論じられているような種類の、生命倫理に関わる問題にうちのいくつかは、既に1970年代から発生しており、それについて様々な議論とともに様々な運動・活動があった。たとえば、組み換えDNA技術による生命操作の問題、尊厳死・安楽死といった言葉で示される人間の死の問題、体外受精や羊水検査を中心とする人間の生の問題などが、中心的な話題とされていた。これらの議論や論争の中から重要なものを選んで、それを再現し読み返していくことによって、現代の生命倫理問題に関して、何らかの示唆を得ようというのが本研究の目的である。結果として、いくつかの重要な示唆を得ることができた。 特に本年度は、「人間の尊厳」という概念に着目した。そして、「尊厳の拡張」と同時に「人間の縮減」が伴うという過程を見いだすことができた。すなわち、倫理のかけ声のもとに「尊厳」への言及が広まることは、一見生命の尊重が進んでいるかのような印象を与えるが、実際には「尊厳」の対象となる「人間」の概念自体を切り詰めていくことと表裏一体であることが見いだされた。 また、こういった「尊厳」概念の受容は、キリスト教的な背景(人間観)をもたない場合においても生じていることを見ることができた。 歴史的事象を振り返って見ることは、現代における生命倫理の議論において重要な基礎をなすものであるため、本研究はそういったデータの一つを提供することに貢献していると考えるものである。
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Research Products
(1 results)