Research Abstract |
風紋に関しては,小型傾斜可変型風洞実験で,風速6.0m/sの一定条件にもと傾斜を変えた実験を行った結果,降坂する風紋の波長は6cmであったのに対して,登坂する風紋の波長は9cmと長くなることが明らかにされた。風紋の波長決定要因として従来指摘されてきた「風速」・「風の継続時間」のほかに「傾斜」が新たな要素としてあげられることが指摘できた点は極めて重要である。 砂丘列に関しては,2つのテーマが実施された。ひとつは,星型砂丘を風洞実験で模擬する風向変動実験,もうひとつは横列砂丘風上側斜面の形態特性を探る2次元断面風洞実験である。前者では,4本峰を有するピラミッド型砂丘の模擬に成功し,その発達段階が明らかになった。5本峰のヒトデ型砂丘の模擬は残された課題である。後者では,風上側斜面形状が「直線型」と「上に凸型」の2つのタイプが再現され両者は風上側からの給砂状況により異なることが明らかになった。 アメリカ中西部の乾燥地域にある大規模な内陸砂丘と鳥取砂丘・内灘砂丘の砂丘砂に関して,薄片を作成することで,鉱物組成を調べた。大陸の内陸砂丘はSediment Maturityが高く,石英粒子に富むと考えられがちであるが,一概にそうとも言えない実態が明らかになった。 鳥取砂丘のボーリングコア8試料の宇宙線生成核種分析を通して,鳥取砂丘の成立史に2つの新たな知見を加えた。ひとつは,千代川流域の平均削剥速度は,砂丘形成以前にはやや速く(ca.0.15mm/yr),砂丘の形成が始まってからはむしろ遅い(ca.0.1mm/yr)状態を保っていること。もうひとつは,砂丘が形成される以前の海食台堆積物の堆積年代が,53万年前(ただし,誤差範囲は広く120万年前~2万年前)と得られたことである。仮に53万年前(MIS13)であるとすると,鳥取砂丘が最初に成立する可能性は,MIS11まで遡ることが可能となる。MIS5までであった砂丘の始まりに,一石を投じたといえよう。
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