Research Abstract |
南極上空で毎年春先に発生しているオゾンホールのために,皮膚ガンや白内障を引き起こす可能性のあるB領域紫外線照射量が増加している。我々は,眼の水晶体や角膜に対する影響に着目して,赤外吸収,ラマン散乱等の分光学的手法を用いて,南極昭和基地で紫外線曝露した牛と豚の水晶体,角膜の構造変化を評価した。22年度は,21年度の結果を踏まえて,人口紫外線照明を用いて,牛眼の角膜と水晶体タンパク質に対する紫外線曝露の影響評価を行なった。実験は,ATR-FT-IR法を用いて,1週間~4週間の期間,UV-Bの照射を行なった際のアミドI,II赤外吸収バンドの強度比に注目して,解析を行った。以前に行なったUV-C照射の際には,アミドIバンドと比較して,アミドIIバンドの強度が顕著に減少したが,UV-B照射の際には,大きな減少は観測されなかった。これは,UV-Cと比較してUV-Bのエネルギーが低いためであると考えられた。しかし,本実験は,主に牛眼を用いた結果であるので、現在ニワトリ眼を用いた対照実験を実施中である。 一方,南極昭和基地周辺で採取した,ペンギン死亡個体から摘出した眼には,解剖学的には顕著な障害は認められなかったが,今後更に採取個体数を増やして実験を継続する予定にしている。また,昭和基地にポータブルラマン散乱測定装置を持ち込んで,生きたペンギン眼の分光学的測定を行なうための準備を進めている。
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