Research Abstract |
住宅需要実態調査における今後の住み替え立地に対する選好(都市中心部,郊外,田園・リゾート)を順序ロジスティック分析により明らかにした. 全国規模でみると,都心中心部への住み替え志向が高いのは,人口密度が低く,大型小売店や病院が少なく,自動車保有台数の多い地域に居住する世帯であった.また,都市中心部への住み替え志向の高いのは,住宅床面積が広く,世帯人数が多く,世帯主の年齢が高い世帯であった.現在は,交通,買い物,医療などの便の悪い郊外の一戸建て住宅に住む中高年世帯が都心部への住み替えを志向していることがうかがえる.すなわち,このような都心部への住み替え志向の高い世帯を念頭においた適切な誘導策を施せば,都市集住が進む可能性が示唆された. また,同様の分析を都道府県別に行ってみると,世帯特性(床面積,世帯人数,世帯主年齢)については上述した全国規模の解析結果と同じ傾向となる都道府県がほとんどであった. 一方,地域特性については全国規模の結果とは異なる地域特性が明らかになった.たとえば,公共交通機関の整備が不足し自動車保有台数が多くても,郊外・田園居住への住み替えを志向する地域は,北海道,千葉,新潟,岡山,香川,沖縄であった.また,栃木では人口密度の低い地域に居住する世帯が引き続き郊外への住み替えを志向している.このような地域での誘導策の検討にあたっては,郊外・田園居住への根強い選好特性に留意する必要があろう.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国・都道府県・市町村の階層で,地域の人口密度・利便性・環境要素と住宅・世帯の特性に応じた居住選好の実態が明らかになり,都市への集住政策を進めるにあたっての有用な知見が蓄積されつつある.あわせて,このような集住政策がもたらしうる交通需要や環境負荷面での効果も推計できた.
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