2009 Fiscal Year Annual Research Report
パブリック・リスクコミュニケーションの評価手法の開発
Project/Area Number |
21510177
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉野 章 Kyoto University, 地球環境学堂, 准教授 (80240331)
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Keywords | リスクコミュニヶーション / 事業評価 / 社会的合意形成 / 共有知識 / 費用便益分析 |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者がこれまでおこなってきたパブリック・リスクコミュニケーションの研究を発展的に受け継ぎ、様々なリスクコミュニケーションの事例を、関係主体間の認知の状況からパターン化し、リスク管理政策の費用便益分析に耐えられる指標開発を目的としている。2009年粗は、行政または事業者による開発行為が一般市民の住環境に影響する場合のリスクコミュニケーションについて検討した。7000規模のアンケート調査を実施し,開発行為で住環境の安全性に不安を抱いたことのなる一般市民とその際のリスクコミュニケーション,さらに,研究代表者の過去の論文でとりあげたゴミ焼却場建設をめぐる行政と地元住民との対立の問題を仮想的に示し,そこでのリスクコミュニケーションのあり方がどのように周辺住民の理解や懸念につながり,それは経済的にどう評価されるかを検討した。 およそ4分の1の人が、これまで住環境の開発行為に直面したたことがあり、さらにその4分の1の人が何らかの形で、その開発行為に対する反対運動に関わった経験を持っている。仮想的に設定した近隣へのゴミ焼却場建設計画に対する反応については、大半の人が納得はしないが、反対に要する費用を支払ったり、仕事や生活をすることには消極的な人が大半であった。この結果は、実際にこうした施設の建設に直面した地域の現実とは異なるものであり、住民の反対活動を激しくさせるのは、必ずしも住民の個人的な資質や理解ではなく、リスクコミュニケーションや交渉の拙さが原因しており、甚大な社会的厚生の喪失を招いていることがわかった。
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