2011 Fiscal Year Annual Research Report
移入浮漂植物の拡大は水生生物群集にどのようなインパクトを与えるか
Project/Area Number |
21510245
|
Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
永坂 正夫 金沢星稜大学, 人間科学部, 教授 (10267718)
|
Keywords | 外来植物 / チクゴスズメノヒエ / 通気組織 / 水生動物群集 |
Research Abstract |
チクゴスズメノヒエの浮島群落の好気的環境形成に関与していると考えられる根系の通気能力を実験的な手法により確認した。測定には根元から1cmほどの長さに根を切り詰めた植物体を減圧瓶に沈め、その根の断面から気泡が出はじめる減圧程度を通気能力とする有門ほか(1990)の方法を用いた。通気圧が30mmHg以下の値を示す場合には通気系組織がよく発達していると考えることができる。泥中に根を張って生育しているチクゴスズメノヒエの場合,比較に用いた浮漂状態で生育するホテイアオイと同様の20mmHg以下の値を示したが、河北潟の浮島状に生育しているチクゴスズメノヒエの根系の通気圧は71mmHgあり、通気組織が発達しているとはいえないことが明らかとなった。 河北潟沿岸に生育するチクゴスズメノヒエ群落において植物体の現存量測定、動物群集の定性・定量的調査を実施した。生育期間中のチクゴスズメノヒエ浮島群落の現存量は乾燥重量で1kgm-2ほどだが、その2/3は水中に展開する匍匐枝と不定根が占めていた。この匍匐枝や不定根に付着する藻類量は大きく、クロロフィルa量で21mgm-2と国内のヨシ帯などで測定された現存量に近い値であった。一方、群落水面下の植物プランクトン量はクロロフィルa量で12mgm-2と開水面の1/3の量に過ぎなかった。日中の溶存酸素濃度が高く保たれるのは、結局は主に付着藻類の同化によるものと考えられた。チクゴスズメノヒエ浮島群落における小型動物については現在、同定作業の継続中であり群集の全体的な特徴を論じることはできないが、タイリクバラタナゴやメダカに加え、トウヨシノボリ、チチブなど底生魚の稚魚、ヌマエビ、スジエビなど比較的大型の匍匐型動物の現存量は抽水植物帯や浮葉植物帯よりも高かった。水中に展開するチクゴスズメノヒエの匍匐枝は大型動物の生息場として機能しており、沈水植物群落が存在しない河北潟においては、その代替空間となっていると考えられた。
|