2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21510299
|
Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
池谷 江理子 高知工業高等専門学校, 総合科学科, 教授 (30249867)
|
Keywords | 子育て支援 / 少子化 / ジェンダー / ジェンダー地理学 / ワーク・ライフ・バランス / 合計特殊出生率 / イギリス / 異文化比較研究 |
Research Abstract |
文献読解と統計分析、英国及び福井・佐賀等少子化対策先進地域における現地調査の結果、以下の事柄が判明した。 1.英国における2に近い合計特殊出生率(1.94、2009年)は出産年齢の上昇、つまり、女性が社会進出後、仕事と出産・子育ての両立可能な環境が備わっていることに依拠している。虐待や貧困から子どもを守るための保育・幼児教育の充実、困窮地区支援など、広範囲の社会支援もこうした状況を支えている。 2,日本では合計特殊出生率が1.37(2009年)と低迷しているが、英国と比べ以下の点が指摘される。(1)出産が保険適用外で乳幼児医療も有料であり、出産等医療が無償の英国に比べ出産・子育ての経済負担が大きい。(2)女性就業者は増加するも非正規労働など育休のみならず産休すら取得できない職場が存在する。英国では産休・育休に該当する休暇を多くの就業者が取得でき、パートも職場復帰者が多いが、日本では子育てと仕事の両立が可能な職場は少ない。(3)日本では保育需要に供給が不足し待機児童が4.8万人(2010年)に及ぶが、英国では多様な保育選択肢があり公的負担等、支援が強化された。(4)経済悪化が若者の雇用環境悪化に繋がり非婚化・少子化に繋がっている。全般に、英国では子ども支援と均等政策、社会保障・社会政策が相まって少子化を改善させたが、日本ではいずれも不十分で成果を出すに至っていない。 3.国内の合計特殊出生率の高い地域では(1)乳幼児医療への公的補助、(2)地域に即した保育園・託児施設の設置、(3)育児相談・支援ネットワークの構築、(4)地域の相互扶助伝統や三世代同居・近居に基く祖父母やシニアの子育て支援、(5)子育て支援や男女共同参画に対する地方自治体の継続的かつ創造的取り組み、に特色がある。
|