2010 Fiscal Year Annual Research Report
メルロ=ポンティの存在論構想における「芸術」の寄与
Project/Area Number |
21520029
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
本郷 均 東京電機大学, 工学部, 教授 (00229246)
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Keywords | 芸術 / 哲学 / メルロ=ポンティ / 存在論 |
Research Abstract |
22年度は、昨年に引き続き、パリ国立図書館にて、メルロ=ポンティ遺稿のマイクロフィルム(BNFマイクロフィルム分類番号:R 1997/120235)を閲覧し、『眼と精神』の成立のプロセスを追った。まず、『眼と精神』がかなり短期間で書き上げられたこと(1960年5月~9月初頃の間)が明確になった。しかし、メルロ=ポンティは、1955, 6年以来、直接には美学関連のテクストを著してはいない。そこで、この問題設定自体がいかにして浮上してきたのかという新たな問題が生じてきた。明確な資料が残っているものではないが、23年度に検討できればと考えている。 次に、覚え書き・メモの部分の検討から、『眼と精神』の原稿を依頼したシャステルの影響を読み取ることが出来た。『眼と精神』本文にはシャステルへの言及はないものの、晩年のコレージュドフランスでの講義録の中には2箇所言及が確認できる。そのような意味で、シャステルのメルロ=ポンティへの思考への影響が確認できた。 最後に、総合的に見て、この『眼と精神』草稿(マイクロフィルム)は論文執筆に関わるすべての草稿やメモを網羅したものではなかった、ということが結論できる。すべての草稿に日付がまったくないためその執筆時期等の確認は困難であり、また執筆の順についても確認の方法がない故、現在の草稿の順序が執筆の順序とは考えられないことが明確になった。その意味で、成立過程そのものを100%明確にすることは困難であるということが明確になった。
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