2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520071
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 祐子 明治学院大学, 教養教育センター, 准教授 (20440183)
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Keywords | キリスト教 / 宗教学 / 東洋史 / 関係史 |
Research Abstract |
2011年度の研究計画に掲げた二つのテーマ((1)「民国期の留日事業とキリスト教」(2)「植民地満州におけるキリスト教」)のうち、(2)については、Conference of British Missionary Societies Archivesに収められているマイクロ資料を基に考察を深めることができた。満州国建国当初掲げていた理念が対米開戦に伴う建国神廟の創設を機に大きく変質を遂げたが、それはすでに孔子廟崇拝を求められていたキリスト教学校が、はるかに強大な偶像崇拝の強制性に曝されることを意味した。この過程とキリスト教学校の反応に関する考察を進め、その成果を論文集のひとつに収めることができた。なお、計画の段階では同テーマに関する研究発表を2011年秋に中国大連で開催が予定されていた学会で行うことになっていたが、中国側の事情で学会そのものがキャンセルとなったため、所期の目的を達成することはできなかった。 (1)のテーマについては、論考にまとめるにはいたらなかったものの、キリスト教学校として唯一中国人留学生向けの学校(志成学校)を設立した立教学院の留学生事業について新たな知見を得、さらに立教学院の姿勢と他のキリスト教学校とのそれとを比較検討するなどして、当初の計画をある程度実現することができた。 このほか科研費で購入を進めたIDC Publishersのマイクロ資料を用いて、民国期最大の国家的課題であった不平等条約廃棄にキリスト教宣教教師はどのように向き合い、キリスト教布教保護条項という特権の放棄という決定がいかなる議論を経て成ったものなのかという問題を追求することができた。以上の三点はいずれも「キリスト教と植民地主義」という、すぐれて今日的でもあるテーマを考える上で重要な論点となりうる。今度とも継続的に考察を行ってゆきたい。
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Research Products
(3 results)