2009 Fiscal Year Annual Research Report
君主制強化策としての社会契約論―ジョン・ロック『統治二論』の新解釈
Project/Area Number |
21520085
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山田 園子 Hiroshima University, 大学院・社会科学研究科, 教授 (10158199)
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Keywords | ジョン・ロック / 統治二論 / 社会契約論 / 君主制 / 古来の国制 / イングランド国教会 / エドワード・スティリングフリート / 主教制教会 |
Research Abstract |
『統治二論』再検討という研究目的のために、本年度は実施計画に従い具体的に以下の二つを行った。 1 明治以降の国内の『統治二論』研究の一部を主に複写により入手し検討した。 2 『統治二論』の執筆背景として、ルイ14世の絶対王政期のフランスにロックが3年間滞在した経緯があり、彼の滞仏事跡を主としてモンペリエで調査した。 この意義と重要性については以下である。 1 について、第二次大戦前の研究については、図書館目録にも記載されていないものが多く、調査には困難がっきまとった。しかし、『統治二論』に直接関わる研究は、現在入手した限りでは、イギリスの社会主義的政治学者ハロルド・ラスキの影響が強いことが明らかとなった点で意義深い。 今後、さらに研究文献の発掘に努める。また、戦前日本での研究と共に、戦後日本の『統治二論』研究も視野に入れ、日本での研究状況について論稿及びその英語版の刊行準備を行う。 2 について、「教皇主義」国フランスとその絶対王権へのロックの恐怖の要因を探った。現地のフランス人研究者ギー・ボワソンやマリー・リヴェットとの面談、モンペリエ大学医学部、モンペリエの公文書館の協力を得て、ロックの滞仏事跡を追跡した。フランス滞在中にロックが最も恐れたのは聖職者の政治・世俗権力への侵出、つまりクレリカリズム(clericalism)であること、そして王という世俗為政者の権力と聖職者権力とのクレリカリズムによる合体・協力が、絶対王政の支配機構を支えて民衆を窮乏のどん底に追い込んだこと、これらの二点は『統治二論』の再検討に重要な視点を提供する。クレリカリズムはスティリングフリートの教会論に見られるように、イギリスでも無縁のことではなかった。こうした点について現在一論文を執筆中である。
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Research Products
(4 results)