2011 Fiscal Year Annual Research Report
君主制強化策としての社会契約論―ジョン・ロック『統治二論』の新解釈
Project/Area Number |
21520085
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山田 園子 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (10158199)
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Keywords | ジョン・ロック / 統治二論 / 社会契約論 / 君主制 / 古来の国制 / イングランド教会 / スティリングフリート / 主教制教会 |
Research Abstract |
本年度はジョン・ロック『統治二論』の再検討を目的として、具体的に三つの作業を行なった。 1『統治二論』における君主制論を読み解く際に不可欠なロックの教会論を解明し、その論文を共著『啓蒙と社会-文明観の変容』に掲載した。 2『統治二論』の歴史的背景を理解する比較視点を確保するため、トマス・ホッブズの歴史認識等と対比し、日本ピューリタニズム学会で報告した。 3ロック『統治二論』にかかわる日本での研究史の追跡と確認を行ない、戦前については、書誌情報をWeb上に掲載し、これをもとにした論文は平成24年夏に刊行を予定する。 1について、教会論をもとに、『統治二論』の執筆課題を明らかにした。それはクレリカリズムの克服、すなわちローマカトリック教皇及びイングランド教会の聖職者支配を克服し、自らが教会の長となりうる強力な君主を、より合理的な基盤に基いて構築することである。 2について、ホッブズの社会契約論が君主の世襲制と矛盾しないことを明らかにした。社会契約論における君主制の設定というホッブズの課題は、ロックにも妥当すると考えられる。従来、両者の社会契約説の相違・対立が言われてきたが、むしろ同時代的課題を抱える両者の類似性が判明した。 3について、戦前日本のロック研究を追跡した。この作業はロック研究史上初めての試みである。戦前の研究では、ロックの穏健性が言われ、その原因として君主制の擁護が指摘されてきた。この点をふまえ、今後の研究課題として、社会契約説と君主制、王位継承との関連について、その両者がどうつながるのか、踏み込んだ議論の必要性を明らかにした。このことは、戦後になって民主化が進められつつ天皇制が存続するという、日本の国制の理解にもかかわる。
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Research Products
(3 results)