2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520090
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Research Institution | Sanyo Gakuen University |
Principal Investigator |
尾崎 誠 Sanyo Gakuen University, 総合人間学部, 教授 (00259574)
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Keywords | 非隠蔽性としての真理 / 別の元初 / 最後の神 / 客体的不滅性 / 永遠的客体 / 出来事 / 永劫回帰 / 終末論 |
Research Abstract |
西田・田辺哲学は、西洋から見れば、仏教思想史上の近代的展開であるが、絶対無を中心として、永劫回帰等他の面には言及していない。日本思想史の隠れた地下水脈には天台本覚思想が流れ、その天台思想は仏典の解釈体系であり、仏教思想の根拠たる仏典の真理性について確認することは甚だ重要である。また田辺はハイデッガーの生の存在学に対して、無の弁証法を立てるが、ハイデッガーの「別の元初」や「最後の神」及び「非隠蔽性としての真理」観については言及していない。本研究では、非隠蔽性、即ち開顕性としての真理観を仏典の開顕構造の歴史的過程へ比較・応用して、大乗非仏説論の帰納主義的推測の限界を示し、超越論的啓示の可能性を開顕的真理観の立場から論じ、新地平を開いた。 田辺はホワイトヘッドの『科学と近代世界』の出来事概念を中心として、その否定媒介的構造を分析するが、他方その主著『過程と実在』には言及していない。アインシュタインの相対性理論が時間の空間化、宇宙の幾何学化であるのに対して、ホワイトヘッドは出来事の関係性から別の相対性原理の解釈を示し、田辺の絶対無に基づくその弁証法的解釈とも類似するが、田辺は現実的存在者における過去の客体的不滅性には言及していない。又ホワイトヘッドの永遠的客体も仏教の法概念とプラトン的永遠のイデアと通ずるが、田辺では永遠的客体には言及せず、又過去の潜勢力も仏教の業概念と通ずるものの、言及されていない。更にホワイトヘッドのプロセスは非対称的不可逆性を示すが、未来に向う無限延長的直線時間観には因果は成立しても、終末論的契機が欠如し、元初への回帰はない。本研究では、田辺の瞬間即永遠観と関連して、ホワイトヘッド、ハイデッガー、キリスト教、天台の時間と永遠の関係性、歴史観について、特に東洋思想の歴史的原型たる易の陰陽の対称性・非対称性の関係からも、東西思想史の隠れた根源的普遍性を考察した。
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