2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520090
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Research Institution | Sanyo Gakuen University |
Principal Investigator |
尾崎 誠 山陽学園大学, 総合人間学部, 教授 (00259574)
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Keywords | 非対称性 / 別の元初 / 最後の神 / 客体的不滅性 / 永遠的客体 / 種の論理 / 世界宗教 / 体用 |
Research Abstract |
本年度は田辺哲学に影響を与えたドイツ観念論、特にシェリングの「人間は本来、神である」とのテーゼを巡って、仏教の「凡夫は本来、永遠仏である」のそれと比較しながら、歴史的現象としての実定諸宗教と本来の宗教、あるいは宗教それ自体との関係を「体用」の論理から解釈し、ハイデッガー的な真理の非隠蔽性、即ち開顕性とも重合させ、その根源的同一性を探るべく試みた。ハイデッガーの「別の元初」、「最後の神」概念は、田辺自身は当時の資料的制約下で論ずることもなかったが、近年欧米の研究と相侯って極めて重要で、田辺を超えて、その歴史的背景をなす仏教思想、特に法華経の解釈において顕著な類比性を示すことを考察した。またホワイトヘッドの汎心理主義は万物同根や草木成仏を説く東洋思想と親近であるが、田辺はその『科学と近代世界』の出来事観に言及するものの、ホワイトヘッドの『過程と実在』の全体像には及ばず、後者の根本概念たる永遠的客体や過去の客体的不滅性について仏教の法や業概念とも比較し、特に時間の不可逆的非対称性のプロセスと田辺の絶対と相対、主体と客体との交互的否定媒介作用の弁証法との親近性を考察した。更に田辺の「種の論理」から現代世界でも焦眉の急たる政治と宗教の関係について、仏教とキリスト教を歴史的に止揚するあるべき世界宗教の理念と歴史的現実の世界政治との相互否定媒介的関係の構築の必要性も考察し、国際宗教学会で英文で発表した。またスウェーデン・ウプサラ学派、ボストレームの絶対観念論的宗教哲学と天台仏教哲学との類似性を指摘し、両者の比較を同国際学会で発表した。また多様の統一としての美の概念を巡ってホワイトヘッド、ハイデッガー、田辺等を比較考察し、学会で提言した。さらに行為、歴史、永遠の関係性について田辺の「種の論理」からそれぞれ個、種、類に対応するものとして考察した英文論文をロシア哲学会の雑誌に発表した。
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