2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520103
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
鐸木 道剛 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (30135925)
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Keywords | クリューコフ / ウナラスカ / エクルトナ / シトカ / 国吉康雄 / 山下りん / アレウト族 / イコン受容 |
Research Abstract |
今年度は、シトカの聖マイケル大聖堂の南礼拝堂である聖インノケンティ礼拝堂のイコノスタスに残るイコンの調査を行った。昨年度のウナラスカの復活大聖堂における調査に続いて、アレウト人の最初の近代画家と考えられるワシリー・クリューコフのイコンの様式研究のためである。シトカの聖インノケンティ礼拝堂のイコノスタスには、王門に『受胎告知』一対があり、その図柄はシトカの主教館礼拝堂、ウナラスカの聖インノケンティ礼拝堂、エクルトナの聖ニコライ聖堂(旧)と同じであり、これで総計4組の受胎告知が見つかったことになる。また同じくシトカの聖インノケンティ礼拝堂には福音書記者ルカが2枚、マルコが1枚、ヨハネ1枚の計4枚残っている。ルカが2枚あることから、2組のイコノスタスから、ここに寄せ集めたものであることが推測できる。この図柄はエクルトナの聖ニコライ聖堂(旧)のイコノスタスの福音書記者像と同じである。またウナラスカの昇天大聖堂にある3組の福音書記者像と粉本を同じくする福音書記者の肖像画が一組のほか、聖ヨハネについては、より原画に近い1枚があり、この福音書記者像についても2組のイコノスタスからの寄せ集めである。ウナラスカの昇天大聖堂には、インノケンティ礼拝堂、セルギー礼拝堂、インノケンティ礼拝堂壁面に3組の福音書記者像があるが、これで計5組見つかったことになる。これらのイコンは、ワシリー・クリューコフあるいは、その後継者たちによる模写と考えられる。記録はないが、様式の比較によって原画と模写との区別は可能である。ウナラスカのイコンについては、昨年度の調査によりアラスカの国立公園事業団(National Park Service)から写真の提供を受けている。またアメリカの先住民へのイコンあるいは「美術」の観念の受容に関して、日本におけるイコン画家山下りん(1857-1939)の作品だけでなく、アメリカで評価を受けた画家国吉康雄(1889-1953)の1920年代の作品が示唆に富むことがわかった。アラスカのアレウト族のクリューコフのイコン受容と合わせて、今後の研究課題となった。
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Research Products
(4 results)